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親が仕事で帰ってきていなかった時のこと。

いつもの通りネットサーフィンをしていた俺の元に、
「眠れない……」
と、枕を抱えた妹がやってきた。


元々2階で洗濯たたんでた上の妹が「さっさと寝ろ!」
ってその10歳の妹に対して言ってた。

その中俺は無視してパソコンに向かってた訳だけれど。

そしたら、下の妹が部屋の戸をノックしてきた。


「眠れない……」
正直中学一年生の妹が五月蝿かったから、俺は無関心に、
冗談半分に「じゃあ俺のベッドで寝るか?」って言ってみた。

正直のところ、こう2ちゃんを閲覧しているわけだし、
正確には無関心を装ったktkr状態だったのだが……。



いつもは強気で小生意気なことしか言わない、ガキンチョなんだけれど、
やっぱり夜は怖いのか珍しくしおらしくて──
「うん……」
半ば冗談の俺の助け舟に、妹は小さく肯いた。


俺は少し動揺した。

それでも「あっそ、俺まだ寝ないから先に布団入ってろ」
と俺は、適当を装いつつあしらった訳で……。

一段目が机、そして二段目がベッドという家具を使っている俺は、
無理やりに眠そうな妹を上へ誘導させ、
そしてそのまま俺は、妹が寝るまで黙ってネットサーフィンを続けた。


しばらく上のベッドはゴソゴソいっていた。

多分なかなか寝付けなかったんだろう。

下ではカチカチ、上ではゴソゴソ──
またしばらくすると、ベッドの揺れは収まって、
「スー……スー……」
と、妹の寝息が聞こえてきた。

とりあえず俺は小さく嘆息した。


それから、友人と通話。

妹いるやつは判ると思うけど、妹を想う気持ちなんてこんなものだ。

普通に夜中まで談笑した俺は、時計の針が2時をさしていることに気付いて、
トイレだけ済ませ、二段目のベッドに上がった。


季節は冬。

あろうことか、妹には掛け布団がかけられていなかった。

何考えてんだ……と、お前は暑がりなのか? と。

違うだろ妹。

実際妹は身体を小さくしていた。


俺は少しだけ、ゆっくりと妹を横に移動させ、それから布団を被せた。

俺も図体は平均並みだし、一人用のベッドに二人……。

その日は布団を被らずに、俺は小さくなって眠った。

その中──唯一暖かかったのは、背中同士でくっつく妹ぐらいだった。


朝、何故か俺は5時半頃に目を覚ました。

俺が起きると妹も、
「ん……んん」
と寝返りをうちつつ、目を覚ました。

その日は、妹のバスケの遠征だったらしい。


俺が「おはよ」と言うと、
「ん……おふぁよ……」
妹は目を擦りながら返答した。

ここらへんは脳内イメージが脚色されているかもしれないが、
まあご愛嬌。

一階では、すでに母親がバスケ遠征の準備に取り掛かっていた。

「ほら、行け」と俺が肩を押すと、
妹は「うん……」と言って二段目のベッドを下りていった。

まだ、眠たそうだった。


俺はそれだけ言って限界。

定番の二度寝へと洒落こんだのだった。


夕方、妹が母親と帰ってきた。

通常モードに戻ったのか、
俺が「おかえり?」と言ってもそっけなく「ただいま」と言う始末。

この野郎と思いつつも、兄としての尊厳が揺らいでいると思いつつも、
俺は平常心を貫いた。


すると上の妹が、
「昨日寝れなくて俺くんのベッドで寝た癖に?」
と妹をいつものように茶化した。

言い忘れていたが、妹2人は俺のことを?俺くん?と名前呼びするのだ。

すると妹は少し口ごもった後「別に怖くなんてなかったし!」
と上に言い返した。

いつもの姉妹喧嘩が始まった。

俺は、
(それにしてもこの我が妹、ツンデレである)
とくだらないことを考えながら、それを傍観していた。


「朝だって自分で起きれたし! 俺くん寝てたし!」
妹がよく分からないところで威張りやがり、
「おいおい違うだろ、先に起きたのは俺だ」
と俺は口を挟んだ。

言い合いに俺も介入した瞬間だった。

結局俺が折れてやったのだが、
どうやら妹は自分のいいように記憶を改変させているらしい。

恐ろしいやつ、学校で大丈夫だろうな……と少し心配した。


そしてこの話のオチ。

風呂から上がった俺は、リビングでゲームをしていた妹を発見した。

「今日も一緒に寝るか?」
そう、何気なく俺は訊いた。

その日は母親は家にいたのに。

答えなんて分かっているのに──
「絶対に、やだっ!」
妹は嫌味たっぷりにそう俺に返した。

そりゃそうだよな……。

「あっそ」と俺は小さく呟き、2階へ上った。

まるでアニメのような、アニメではない一日だった。