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自転車通勤してた頃のこと。

よく、同じく自転車通学のポニーテールの女子高生が走ってることがあった。

いつも、きちんとスカートをお尻の下に敷いてたけど、その日、あわててたのか彼女は、サドルに直にお尻をつけた状態で乗ってた。

 
男としてはもちろん、アレを期待して、彼女を追い越さないように後ろから見守ってたんだが、思うような風は吹かなかった。

彼女も気になっていたのか、信号待ちのとき、俺の横で、スカートを直そうとして両手を離した。

そしてお尻に手をやった時、前カゴの荷物が重かったみたいで、バランスをくずしてこけやがった。

 
ゆーっくり、地味?に、自転車ごと倒れた。

彼女の悲鳴?も、「う、わ、は、ひや、ああ」と何故かスローだった。

そのときに、ようやくパンツが見えた。

 
あー、白だ!よかったよかった!
 
で終わるわけにはいかない!颯爽と自転車を起こすのを手伝い、
「大丈夫?(areyouOK?)」と手を差し伸べる。


しかし大丈夫ではなかった。

その日は快晴だったが前日の雨で、そこには浅い水たまりが残っていた。

彼女は水の上にもろに尻餅をつく格好になってしまったのだ。

スカートとパンツがぐっしょりなのは明らかで、ちょっと泣きそうになってた。

 
それでも気丈に自分で起き上がると
「ありがとうございます、もう大丈夫です」とハキハキした挨拶。

俺なんかより大人だ。

 
これを機に女子高生とお近づきに!という俺の淡い期待は、毅然とした彼女の態度の前に、瞬時に萎えてしまった。

って言うか、おめーパンツ見ただろ!的な彼女の眉間のシワがちょっと怖かったのだ。

怪我はしてないようだったが、しばらく自転車を押して歩くことにしたらしい彼女に、じゃあ、と一言だけ言って、俺はそそくさと走り出した。

 
少し走って後ろを振り向くと、普通に自転車をこぎ出した彼女の姿を遠くに確認できた。

まあ大丈夫みたいだなと安心しつつ、お近づきになれなかったのが残念だった。

 
さて、彼女が通う高校を過ぎたとこにコンビニがあって、俺はよくここで朝食としてサンドイッチを買う。

コンビニ出て休憩しながらその場で食べたり、会社に着いてから食べたりだけど、その日はその場で食べ始めた。

そしたらさっきの女子高生がきた。

 
コンビニ前に自転車を止めてから、ようやく俺に気付いて、ぎょっとしてた。

 
軽く会釈をしてたが、ものすごくバツの悪そうな顔でコンビニに入ってった。

外から様子をうかがってると、何か物色してるようで、あ、替えのパンツを買いに来たのかなと思った。

ところが、レジに行く様子もなくて、トイレに行ったみたい。

 
で、しばらくして、何も買わずに出てきた。

俺はサンドイッチを食べ終えたので、そろそろ会社に向かわなきゃいけない。

でも、出てきたその子が、ちらちら俺を見てる。

 
うーん。

何かあったのか。

でも表情はちょっとこわばってる。

何故か気圧される俺。

 
何か言いたそうな、言いにくそうな、もじもじしてる女子高生。

何か知らんが、ここは俺の出番なんだろう。

こっちから話しかけてみた。

 
「さっきは大丈夫だった?」
 
「あ、はい、大丈夫ですけど…」
 
やっぱり何か言いたそうだけど、何なんだろう。

 
「怒ってる?パンツ見ちゃってごめんね!」
 
これはカケだったけど、あえて明るくおちゃらけてみたのだった。

これが功を奏した。

 
「あはは、それは別にいいんですけど…あの!、…お金…貸してもらえませんかっ…」
 
パンツ買いに来たのはいいが、お金が足りなかったんだそうだ。

100円ショップ的な、使い捨て的な、小銭で買える程度のものが売ってると思ってたら、意外と高いのしか置いてなかった。

黒に近い濃紺のスカートは、濡れてても染みは目立たないし、学校にジャージも置いてあるから、何とか対処できるけど、パンツは今どうにかしたい、と。

 
同じ通勤路(通学路)を使ってるとは言え、この子が俺をはっきり認識したのは今日が初めてだろう。

そんな見ず知らずも同然の人間、しかも男に、年端もいかない娘がそんなお願いをするのは、どんなに恥ずかしいことか、想像に難くない。

真っ赤な顔があまりにもかわいくて、まあかわいいのが理由じゃなくても、懇願を受け入れないわけにはいかない。

人として。

 
5000円札を渡すと、彼女は何度もお礼を言って、再び入店。

ああ、俺、早くしないと会社に遅刻する!
また通勤中に会えるだろうし、待たずに行こうかと思ったんだが。

 
コンビニ店員のおっさんが、出たり入ったりトイレに行ったりしてる女子高生を不審に思うんじゃないかとか、パンツを買ってトイレに直行する彼女を、興味深げにニヤニヤして観察するんじゃないかとか、そんな気がして心配になったので、俺も店に入って、ちょっと離れながら見守ってあげた。

 
彼女も同じ心配をしてたみたいで、俺が一緒にいたのでホッとした表情を見せてくれた。

何か言われたら俺が事情を説明してあげようと思って、遅刻覚悟で待った。

 
まあそれは余計な心配だったけど、ようやく出てきた彼女からお釣りを受け取った。

連絡先を教えてという彼女に名刺を渡して、俺は会社に急いだ。

 
まあやっぱりちょっと遅刻したんだけど。

仲のいい上司に、ちょっと注意されただけで済んだ。

 
「すいません、女子高生のパンツを買ってたら遅刻しました!」
 
「そうか、それはしょうがないな、君はクビだ」
  
てな感じで、上司も冗談と受け止めたんだろうけど、午後その子から会社に電話がかかってきたので冷やかされることに。

 
さて、ここまで読んでくれた方に残念なお知らせですが、それからしばらくして、その子と付き合うことになりました。

幸せいっぱい夢おっぱいでごめんなさい。

この事件当時は彼氏がいたようだけど、間もなく別れてから、俺と付き合ってくれた。

俺と付き合いたくて彼と別れたという意味じゃないのでご心配なく。

 
で、彼女も高校を卒業し、大人の付き合いに発展するようになってから聞いたこと。

彼女は、パンツを買いにコンビニに行ったとき、所持金でパンツが買えないことに気付いて、大いに悩んだ。

しかし、ぐっしょりのパンツが気持ち悪いので、とにかく脱ぎたかった。

そして何も買わずにトイレに行って、彼女はパンツを脱いだ!
 
学校まで何とかノーパンでしのぎ、学校についたら、置いてあるジャージか短パンを穿こうと思ったのだ。

でもやっぱり、ノーパンでトイレから出て、店内を少し歩いただけで、ノーパンのやばさを実感。

これはやばい、やっぱ無理だ!と。

トイレに戻ってもう一回、濡れたパンツを穿こうかと思ったけど、もう気持ち悪いし、何度もトイレに行ったりきたりして、店の人に変に思われるのもイヤだし。

 
で、外にいる俺に助けを求めたのだった。

あのとき、妙にもじもじしてたのは、ノーパンだったからか!
 
俺はッ!あのときッ!ノーパンミニスカ女子高生とッ!会話してたわけかッ!
何とも言えない、悔しさに似た感情が込み上げてきた。

 
「何でその時に、私ノーパンですって、言ってくれなかったんだよう!」
 
「言えるわけないでしょ!ヘンタイ!」
 
「もっかいやってよ、制服で!」
 
「え、あ、…うん、いい…よ」
 
「え、いいのかよ」

高校時代の制服を着てくれた!かわいい!
 
「久しぶりに着た。

これコスプレ?やらしー感じ…」
 
「パンツ穿いてる?」
 
「穿いてないー、やばいー!」

「あのとき、どんな風に尻餅ついた?やってみて」
 
「えー、えっと、こんな感じ…」
 
「ちがーう、あのときパンツ見えてたもん、もうちょっとスカートが、こう」
 
「もうやだー!、こ、こんな感じ、だった?、ひー、見えちゃう…」
 
「大丈夫?(areyouOK?)」と手を差し伸べる。

 
「…大丈夫じゃないよお…」
 
ぐっしょりでした。


お金貸さないバッドエンド篇をどなたか書いてください

※5
「あはは、それは別にいいんですけど…あの!、…お金…貸してもらえませんかっ…」

「いきなり言われても…」

「そうですよね、ごめんなさい」

彼女はペコリと謝ると、少しもじもじしながら自転車のもとへと歩いていった。

その時、風が急に吹き付けたかと思うやいなや、彼女のスカートが大きく巻くれ上がった。


「は…履いて、ははは…履い」

「キャーー!」

刹那、彼女の悲鳴が辺りに響き渡った。

するとやじ馬が集まり、彼女に何があったのか説明を求めた。

彼女は涙を流しながら、

「あの人が、私のっ…、うっ、うっ」

彼女の様子と言葉の端々から、どうやら私は変態扱いをされたようだ。


「いや、違いますって、事故ですから。

事故ですって」

私の言い訳も虚しく、数分後に警察が駆けつけた。

どうやら会社には間に合いそうにもない。


―数ヶ月後―
最近、私はあの時の彼女の言葉と、その後の悲劇を夢で見る。

「お金を貸してもらえませんか」、あれはきっとパンツを買うために勇気を振り絞って頼んできたのだろう。

もし私がお金を貸していたならば、今でも会社を解雇されることもなかったのかもしれない。

それどころか彼女と恋人関係になるのも夢では無かったではないか。

しかし今となっては全てが悲しいだけだ、そう思い私は檻の中で考えることを辞めた。


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