きまま_040
7月ごろのこと。

校内でいつものようにAさんのスカートの中を誰にも気づかれることなく堪能していた。

ただこの日は、いつもと違った。

階段を上がっている最中だった。

Bさんから言った。

「いつもスカートの中、見られていてもいいの? 」ついに気付かれてしまった。

そう思った。

しかしそのとき、Aさんの意外な応えを聞き知ってしまった。

「○君だったらいいよ」。

その一言は、いろんな感情を引き起こした。

私が見ていたことに前から気づいていたのは伝わった。

そして当然に拒絶し、手でスカートを押さえ、中を片手で隠すだろうとも思っていた。

でも隠すそぶりもしなかった。


スカートの中から伸びる両脚と、その間から見えるあの部分(この掲示板で連載してきた放課後のひと時のどこかにこのときのイメージ画像を転用している。

イメージ画像の場所や人物はAさん本人ではないことを敢えて断わる)。

いつもの真っ白な布地がフィットしたあの部分があけっぴろげになったまま、階段を上がっていた。

見るならしっかりみなよと言っているように思えた(女性視点ではそのつもりはないと思う)。

この一部始終にさらに興奮した。

倫理観と理性でかろうじて抑えていた劣情がドバーッと全開になってしまった。

もっと近くでみたい、冷たい目で変態と言われてもいいから心行くまでAさんのスカートの中をすぐ近くでみたい! 心から強くそう思ってしまった。

なぜそう思ってしまうのかはわからなかった。

とにかく魔性の一言だった。

その一方で、まるでAさんにすべてを受け入れられているかのような錯覚に陥った。

このようないろんな感情が脳内で暴走する興奮状態は初めてだった。

彼氏彼女の関係でもないのに非日常的な空間でいわゆるパンチラを許してもらえる。

しかも対象としている女の子から直々に許しが下りることがどれほど強い刺激を引き起こすことか! 実際に彼氏彼女の関係に発展してしまうと、互いに気心が知れているから、同じような非日常的なシチュエーションであっても、それほど興奮はしない。

この異常な興奮状態は第三者からみれば劣情としかいいようがないのは認めざるをえない。

この興奮状態は、まだ相手と仲良くなる前の(極端に言えば見ず知らずの相手との)関係だからこそ起きる、ある意味で特殊なものだ。

とにかくこの異常なまでのどうしようもない興奮状態を鎮めるために、3階に上がりきった時に、個室のトイレでしばらく過ごしていた。

心身ともに鎮まるまで、また時間がかかった。

同級生の女子生徒のすべてではないものの、ここまで性的に強い刺激を引き起こす女の子はそう滅多にいるものではないと思った。

その意味で、女性という生き物は罪深いと思ったし、ちょっと怖い存在だと思った(その気になればつるしあげることができるから)。

鎮まってから3階のいつもの渡り廊下を通り過ぎ、Aさんの部室を通りすがるときだった。

部室のほうから会話をする声が聞こえた。

物音などから察してAさんとBさんの2人だけのようだ。

更衣中のようだ。

「図々しいにもほどがあるんじゃない? 」Bさんが言った。

さっきの覗き見のことかなと察して続きをきくことにした。

「前から見られてたのは気付いてた」と言った。

私の名前を言った上で見ていいよと言ったくらいだから、気付いていたけど黙っていただけなのはわかった。

でもあえてAさんがはっきりそう言ったのをきいてしまった。

「いつまで続けるんだろ。

しつこいなら本格的に訴えたほうがいいんじゃない。

」。

彼女らが着替えを終えて部室から出ようとするころだった。

気まずくなり、その場を去るように校門に向かった。

部室での一部始終をきいて、彼女らから諭されたと受け止めることにした。

この日のことがあってから放課後のささやかな楽しみだったAさんのスカートの中の覗き見は心から反省し辞めた。

その後、AさんやBさん、彼女らの友達から、この件でクラス内で変な目で見られたり報復されたりすることはなかった。

校内でもこの件が広まることはなかった。

高校を卒業した後も、この件が原因でしっぺ返しを受けたと思える仕打ちをうけたことはない。

実質的に無罪放免かと思っている。

AさんやBさんとは気心の知れている間柄ではない。

だからこそ、覗き見は当然許されるはずはない。

これが通常の倫理観であり理性というものだと思っている。

それなのに、Aさんのスカートの中に興奮し、さらに、あなただったら見てもいいよと言ったAさんのあのときの一言に興奮したことが記憶に刻まれている。

あのシチュエーションとはいえあれが年頃の女子生徒の実態なのだろうか、と。

少なくとも私にとってあの2ヶ月間の覗き見の件は、年頃といえば半数くらいの男子生徒は野蛮であり女子生徒は例外なくみな淑女で性に関する話題をすることはないと思っていただけに、そのイメージが崩された出来事でもあった。

夏休みに入り、事を起こすことなく、普通の高校生3年生として夏休みを過ごした。

夏休みが明けてからも平穏に過ごすことができた。

そして3月、何事もなく高校を卒業した。