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文章が下手ですが、読んで頂けるとありがたいです。


 演劇サークルに入っている俺は、文化祭の打ち上げで、20人のメンバー全員と馴染みの居酒屋に来ていた。

 初めて俺が脚本を担当し、大成功を収めた事で、次回も脚本を任せてもらう事になった事で、少し上機嫌になっていたのかもしれない。

 普段は1、2杯で止めておくのに、何杯飲んだか分からないほどで、気付いたらベッドに寝かされていた。

 傍らには、俺に脚本の全てを教えてくれた紺野先輩が、すやすやと寝息をたてている。

3年生で、俺の一つ上の人だ。

スラリとした長身の美人だが、どこか幼い印象も覚える不思議な人であり、俺の好きな人でもある。


 不完全な意識を叩き起こし、携帯で時間を確認。

朝の4時。

「あちゃ・・・飲みすぎたかな」
 幸い二日酔いにはなっていなかったが、意識は安定せず、視界がブラックアウトしそうになる。

それをなんとか押し留め。

先輩の肩を叩いた。

「先輩、先輩」
「ん・・・あれ、ユウくん。

なんでベッドに・・・?」
 先輩は寝ぼけ眼を擦り、ベッドを支えに起き上がる。

「分からないです。

多分、先輩か誰かが連れてきてくれたんだと思いますけど」
「んっ・・・あ、そっか。

ユウくんが酔っ払っちゃってダメダメだったから、私の家に運んだんだよ。

珍しいね、ユウくんがあんなに飲むなんて」
 指摘を受け、猛省。

弱いのに考えないで飲むと、こういう風になるのだ。

「すいません。

つい嬉しくて・・・これも、先輩のおかげです」
「私の?」
 キョトンとする先輩。

その先輩に、自分の想いを伝える。

「先輩が俺に脚本の事を教えてくれたから、お客さんを喜ばせる作品を作れたんです。

もし俺が独学で、いや、他の人に教わってても、きっと上手く出来なかったと思います」
 まだ酔いが残っているのか。

普段なら恥ずかしい台詞が、次々と口から吐き出されていく。

 おかしいな、俺は自分で言うのもなんだが、あまりお喋りな人間じゃない。

それなのに、今だけはお喋りに、いや、寡黙である事を禁じられているような、そんな感覚。

「そんな・・・でも、本当に立派だったよ。

部長も感激してたし。

知ってた? 衣装班のカナちゃんも、ユウくんのこと認めてくれたの」
 カナ先輩が・・・。

そう呟き、俺は心の中で思い出す。

 俺が脚本を担当する事になり、一番反対したのはカナ先輩だった。

紺野先輩の親友で、誰よりも紺野先輩の作品が好きだったからこそ、俺を受け入れてくれなかった。

 そんなカナ先輩と何度も衝突を重ねて、危うく崩壊しかけた所を立て直してくれたのも、紺野先輩だった。

 喧嘩になった俺たちの間に割って入り、二人ともを叱ったのだ。

どちらかを責めるのではなく、双方反省するように、と。

「カナ先輩に・・・そうか。

よかった・・・」
 安堵の溜息。

舞台終了後に、カナ先輩は一人だけトイレに向かってしまい、飲み会でも俺とは離れた位置にいたので、話す機会がなかった。

それだけに、内心ではビクビクしていたのだが。

「ねぇ・・・先輩? 先輩って、彼氏いるんですか?」
 何故か、そんな事を聞いてしまう。

不思議だ。

考えて言った訳じゃない。

無意識的に勝手に口から出てしまっていた。

「ううん、いないけど。

それがどうしたの?」
 先輩の疑問系の回答。

 今、言ってもいいのだろうか。

もし今伝えたとして、断られたら、今までのような関係でいられるのだろうか。

 良き師弟としての、厳しくも楽しい日々は、終わりを告げてしまうかもしれない。

 そう思うと、伝えようとした想いを、閉ざしてしまいたくなる。

 俺が言わなければ、きっと先輩は気付かない。

そうすれば、ずっと仄かな想いを抱いたまま、幸せな気分でいられるだろう。

 ・・・でも。

でも、それじゃあいけない気がする。

 自分に正直に。

紺野先輩に一番最初に教わった、対話の基本。

たとえ先輩でも、自分の意見をしっかり言えという、俺にとっての教訓。


だったら・・・。


「先輩。

俺、先輩が好きです」
 それは、きっとか細い声だったと思う。

蚊の鳴くような、小さな小さな告白。

 でもそれは、しっかりと紺野先輩に届いていた。

「・・・本当? 酔った冗談じゃなくて、本当に?」
 紺野先輩の頬は赤い。

朱に染まった頬は、とても綺麗だ。

「本当です。

いつからかなんて分からないけど、気が付いたら、いつも先輩を見ていたんです。

だから・・・!」
 そこで一旦切り、紺野先輩の顔を見据えて、
「俺の彼女になってください!」
 時間の事なんて考えられなかった。

ただ、想いをぶつけたという開放感と、そしてその後にくる緊張感だけが、全てを支配していた。

 紺野先輩は黙って俺を正面から見つめて、見つめて。

そして、ふっと花のような笑みを浮かべ、
「うん!」
 大きく、笑った。


 その後、俺と先輩は演劇サークルで脚本家として活動し、卒業後も仕事の傍ら、元メンバーが主宰する劇団の脚本を手掛けている。

 仕事は忙しいし、育児も難しい。

それでも、紺野先輩が隣にいるから、俺は頑張れるんだと思う。

 いや、紺野先輩という呼び方は正しくないな。

 告白の後も、初体験の後も、なかなか直らずに指摘されていた。

紺野先輩と呼ぶのに慣れすぎて、名前を呼ぶのが恥ずかしかったのだ。

 だが、結婚して5年。

恥じらいも薄れ、普通に名前で呼び合えるようになった。

「香澄」
「優くん」
 それが、俺たちの呼び方。

香澄はまだ、俺をくん付けで呼ぶのが、少しおかしくも、楽しい。

そんな、ある日の午後。
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