きまま_107
15歳年上の社員との秘密のやりとり。

これは、私が大学生の頃、家電量販店でアルバイトをしていた時の話しです。


内定を頂き、少しでも入社してから会社の為になれるようにとアルバイトとして勤務することになりました。

 

初日から10日くらいは立ち仕事に慣れず足の痛さと、繁忙期でとにかく忙しくてあちこちから呼ばれ、走り、ほとんど記憶がありません。

必死でした。


初めてのレジ作業、修理の受付、電話対応、何もかもが訳が分からずその度に上司のMさんに聞いていました。


Mさんは、当日で37歳、私とは15歳ほど差がありました。

元々私は年上好きでしたので、アルバイトで入社してすぐ好感は持っていました。


何より、落ち着いて仕事をしている背中、接客をしている横顔、優しい笑顔、すごく憧れていました。


もちろん、奥様がいてお子さんも3人いることを知っていましたので、私の一方的な片想いというか憧れで終わるはずだったのです。


しかし、それは突然やってきました。

いつものように倉庫に商品を探しに行ったとき、急に横から出てきたMさんにふわっと抱かれたのです。

もう、パニックでした。

心臓が飛び出そうでした。

『どうしたんですか?』それしか言えませんでした。

『いつも一生懸命頑張ってるのを見てつい…抱きしめたくなって…』とMさん。

 

ひとまず、私は接客中でしたので恥ずかしさのあまり『お客様中なので…』と返しすぐ倉庫を出ました。


それからどうやって上がる時間まで過ごしたのか覚えていません。

ただ、Mさんの匂い、筋肉質の腕の感触は消えず次のバイトの時、どんな顔をして会えばいいの?と頭の中はぐるぐるでした。


ドキドキと嬉しさ、なぜという不安、色々な気持ちのまま次のバイトを迎えました。

そんな精神的にふらついたままバイトをしてしまい、お客様の希望の配送日を間違って入れてしまった私。

配送時間を商品管理の方が連絡すると、『私たちはその日に配送を頼んでいないです!○○日じゃないと共働きなので無理です!』とお客様。

そこからは大変でした。

お客様の希望日は他の配送でいっぱい、どうにか店の中の社員で配達に行くしかない、もう泣きそうというか、泣きました。

倉庫で。

色々な方に迷惑をかけて、申し訳なさと不甲斐なさで…。


こっそり倉庫に入ったのを見ていたのか、後ろからまたあのふわっとした優しい腕が回されました。

そう、Mさんです。

振り返らなくても匂いで分かります。


くるっと前に向き直され、『大丈夫だ、配達は俺が行くし、お客様にもちゃんと俺が話す。

何も心配することはない、ただ商品管理の社員にはちゃんと謝っておきなさい。

』と言われ、唇がまたふわっと重ねられました。


とてもとても優しいキスでした。

びっくりもしましたが、安心と安堵で私も気付けば腕を回していました。

 

それから何度も何度も優しいキスの雨、何回唇を重ねたのか分かりません…  『お前を見てると健気で守ってやりたくなるんだよな…』とMさん。

『Mさんには奥様もお子さんもいるでしょ…』と言うと、『そうなんだけど止められない』とまたキス。


そこから、私たちの関係は続いていきました。

広くて薄暗い倉庫は私たちの秘密の場所。

夏は少し暑くて、でもまた汗ばんだ首元に手を回してするキスが大好きでした。

Mさんの匂いが大好きでした。

腕が大好きでした。


異動は突然前触れもなくやってきて、転勤になったMさん。

それ以来音信不通にもなってしまいましたが、今でもあの秘密の倉庫はよく覚えています。


今では私も結婚して、3人の親。

主人はあの時のMさんと同じ年齢。

もちろん思い出しますが、そっと胸のうちにしまって思い出に浸ります。

あの匂い、あの匂腕、あの倉庫、また夢でもいいから会いたいなぁ…
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