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俺が出会ったA子の話。

物語的に記したものなので長文ですが、よろしかったらお読みください。


今はブログが普及して誰でも気軽にネットで情報配信することができる便利な世の中。

若い人なら誰の手助けもなく比較的簡単に自分のブログサイトを持つことができるだろう。

話は今から20年以上遡る。

時は1996年4月。

世の中では95年末に発売されたWindows95のおかげで大騒ぎ。

今までパソコンといえばコマンド入力等、何かと素人には敷居も高く、何より高額ということが最大のネックであった。

俺はといえばエロゲー&PCゲーム目的で親父に買ってもらったPC9801を数年前から使っていた。


そんなわけでWindows95が発売されたときの衝撃は忘れられない。

ピーヒャララというモデム独特の音と共に自分が開設したホームページが開いた。

当時、世間ではインターネットという言葉すら耳にすることがほとんどなく、会社の同僚や友人の中でも自宅にパソコンを持っている者は数人で、もっぱらホームページを見せるのはネットで知り合った仲間たちだ。
ホームページを作成するといってもすべてタグ打ち。

作成ソフトなるものが存在したがお世辞にも使いやすいといえるものではなく、無駄タグ、意味不明なタグなど、メモ帳を使ってページを作るというのが主流だった。

当然、タグというものを知らなくてはダメで素人には手が出ない領域だ。


当時、学校職員だったこともあり、教えることについてはそれなりの自身があった。

俺はページ上に『ホームページの作り方、教えます』的な内容のページをアップしていた。

ある雑誌に付属のソフトを使えばテキストエリアにタグの自動入力ができたり、簡単にJPGやGIFを作ることができ、データをアップするためのFTPソフトも付属していたのだ。

その付属ソフトをベースに説明ページを作ったのだが、なかなかこれが評判がいい。

ページを見た人から質問メールが届き、返信に追われる日々が続いた。


ページを公開して1ヶ月あまり経過したころだろうか、メールが届くこともなくなり俺の生活は以前と同じに戻っていた。


『18歳の女の子です』

今なら出会い系サイトへ誘導する迷惑メールのタイトルそのもののようなメールが届いていた。

まだ出会い系という言葉もなければ迷惑メールなども存在しない。

何の疑いもなくメールを読んでみる。

どうやら俺のサイトを見て雑誌を買ったが、ソフトがインストールできないという。


さっそく返信して詳しく状況を聞いてみる。

すぐになぞが解けた。

彼女は親父さんのマックを使っていたのだ。

当然、Windows用ソフトが使えるわけがない。

聞けばペイントソフトやタグ打ちソフトは代わりのソフトを見つけたが、データを上げるためのFTPソフトだけが見つからないという。

正直、マックはほとんど触ったことがない俺はネットで情報を探ることに。

今と違ってホームページの情報はまだまだ少ない。

ただフリーソフトやシェアウェアを集めたページはすでに存在しており、そこで調べるとすぐにわかった。


たったこれだけであったが彼女は大感激。

自分で作ったページをさっそくアップロードし俺に見せてくれた。


A子『T先生に一番初めに見せてあげる』

数回のメールを交わしただけだが、A子は俺のことを『先生』と慕うように呼んでくれた。


そのA子が始めて作ったページは女の子らしい可愛いものだった。

自己紹介にはA子の写真と住んでいる場所などが書いてあった。

当時はまだまだ個人情報うんぬんという考えもなく、オープンに顔写真や住んでいる地域を公開している人が多かった。


ホームページのA子はとても可愛い。

身長も143センチとミニミニサイズで、愛くるしい笑顔のA子に俺は一目惚れしてしまった。


そんなA子に『写真は怖いから消した方がいいし、住所もせめて都道府県までにしておこう」』などのアドバイスをした。

A子は意欲的にページを作り込み、チャットや掲示板などを俺の指導のもと、あっという間に開設。

女性がネットをしている環境も珍しい世の中、A子は瞬く間に人気者になっていった。


18歳の彼女にとって、アイドルのように扱われるのはとても気分がよかったのだろう。

ネット友達にそそのかされて、『ネットアイドル選手権』なるサイトに応募したい・・・という相談があった。

(今考えるとストレート過ぎる選手権だが・・・)
優勝者はネット書籍で紹介され、1年程度雑誌と連動で活動を行うという。


当時、俺は23歳。

A子に好意を寄せつつも、A子にとって俺はあくまでも『先生』であって、良き相談相手でしかなかった。

出来ることならA子は俺だけのもの・・・でも、顔写真を晒して人気者になってしまえば遠くに行ってしまうだろうと思っていた。


A子は、『先生に写真を選んでもらいたいんです』と数枚の写真を送ってくれた。

日頃から写真の扱いには気をつけるように言っていたこともあって、A子は、『この写真は先生にしか見せないから安心してね』と書いてあった。

そういう意味では俺は他のどのネット友達よりもA子のことをよく知っていただろう。


パジャマ姿でニッコリ笑っている写真。

女の子らしく飾られた部屋で撮られた写真。

ペットと写っている写真・・・。

どれを見てもA子の魅力が伝わってくる写真であった。

その中から1枚、笑顔が一番可愛いと思った写真を選んだ。


A子の人気は凄まじいものがあり、地区予選をぶっちぎりで優勝、6人で争われる本選に出場することになった。

まあ、ぶっちぎりといっても当時のネット人口はたかが知れており、地区1位といっても参加は20人程度で得票は500ほど。

それでも2位には倍以上の得票だったのだからA子の人気は相当なものと思っていた。


本選に出場してきた6人は地区予選を勝ちあがっていることもあり、レベルが高い。

ただ、どう見ても(お前、AV嬢だろ)とか(風俗の宣材写真だろ)という写真もあったりして、票はA子を含む明らかに素人という3人に絞られた。


ここで、その3人を紹介しよう。


K地区代表のY美:21歳、劇団員、アイドルフェイスでスタイル抜群。

もっとも激戦だった地区を勝ち上がった本命。


S地区代表のA子:18歳でショートカット、身長も低く、ロリファンの人気が集中。

本選ではパジャマでニッコリで勝負に出た(対抗)。


H地区代表のK子:20歳、コスプレーヤー。

ちょっときわどいコスプレ衣装に人気が集まる(大穴)。


下馬評ではアイドル予備軍とも言えるY美がぶっちりぎりであろうということであったが、A子もK子も善戦している。

投票期間は2週間。

リアルタイムに集計結果が出るシステムにみんなが注目していた。


投票終了まで3日と迫ったある日、事件が起こる。

A子、Y美に少しずつ差を広げられていたK子の得票が突如アップし、トップに躍り出る。

が、とある人物の指摘で「組織票ではないか」という疑いがもたれる。

運営事務局はすぐに調査を開始するが、早くも不正行為が暴かれることになった。

コスプレーヤーとして人気のあったK子は固定ファンがとても多く、自分のキワドイ写真を提供する代わりに投票を依頼していたのだ。

その噂はチェーンメールのようにあっという間に広がり、エロ写真目的でK子に投票する者が続出した。

エロ写真で買収したという事実によりK子は残り2日で失格となる。

その後、K子のエロ写真がサイトに出回ることになり、自ら墓穴を掘ったK子はすぐにネットの世界から姿を消した。


K子の脱落により、A子とY美に絞られた。

K子に投票していた者たちは救済措置として他の投票者に投票する権利が与えられた。

アイドル対ロリ娘の対決は第1回大会にふさわしい接戦となったが、間もなく投票終了を迎える。

公平性を保つために最終日は投票状態がクローズされており、集計結果のみを発表することになっていた。


A子とチャットをしながら結果を待つ。

A子自身はここまで大事になるとは予想もせず、戸惑い気味。

メールアドレスを公開していたこともあり、ファンメールも100通近く届く始末。

A子はそんな俺のためにプライベートアドレスと専用チャットを開設してくれていたのだ。

ノリ気でない俺は正直なところ、優勝されたら困ると思っていた。

心の中では、(負けてくれ)と思っていた自分がいる。


結果が出た・・・。


1位はY美、2位はA子。

その結果にほっとしたような、A子が負けて残念なような気分。

得票差はわずか100票に満たなかった。

総得票数は1万票程度だったが、その大半はY美とA子で占められていた。


A子『負けちゃったねー。

でもほっとしている』

A子もまさか優勝するとは思ってもいなかったようで、雑誌に出たり取材に協力したり、そこまでは考えていなかったようだ。

だが、この『ネットアイドル選手権』によって飛躍的に知名度が上がったA子は俺の予想を超える行動を起こすことになる。

全国区の人気者となったA子は頻繁にオフ会に参加するようになっていた。


そんなある日、A子が『先生に会いたいです』というメールを送ってきた。

聞けば、俺の住んでいる地域でオフ会があり、それに参加するという。

オフ会メンバーは俺も知っている名前が連ねている。

男6人、女4人というメンバー。


実はこの男6人は、俺を含めてみんなA子を狙っていた。

A子が『先生』と俺を慕っていることはみんなが承知していて、親密度で言えば俺が一歩リードしている。

が、裏を返せば、俺は『先生』であって恋愛対象ではないのだが・・・。


都内某所の居酒屋で行われたオフ会。

出会った頃は未成年だったA子だったが、ちょうどオフ会の日が20歳の誕生日であり、お酒の解禁日でもあったのだ。

真面目なA子は今までお酒を口にしたことがないという。

調子に乗って飲んだA子は当然気持ちが悪くなり、早々に寝込んでしまった。

A子が目的とは言っても他の女性メンバーはみんなフリーであり、A子がダメなら他の2人で・・・と目論んでいたメンバーもいたため、A子をよそに盛り上がった。


11時を過ぎ、一次会がお開きになる。

電車の時間があるメンバー3人、男2人に女1人がここでお別れ。

後になってわかったのだが、ここでカップルが成立していたのだ。

そのカップルはその後結婚して、今でも俺とは年賀状のやり取りをしている仲だ。


都内ともなれば明け方まで営業している店も多く、残ったメンバーでカラオケ店に行くことになった。

男4人、女3人というメンバーなので、男女交互に座った。

ちゃっかり仕切っていたリーダー格のK太は、自分の隣にA子が来るように仕向ける。

俺は一番隅に追いやられた。

隣には何度かメール交換していて、そこそこ仲がいいY美が座っていた。

A子は俺とは一番離れた位置に座っている。

どう考えてもK太が俺とA子を引き離しているとしか思えない。


Y美は勘が鋭く、俺がA子に好意を寄せていることに気がついていた。

K太の露骨過ぎるやり方に反発したのか、Y美は予想外の発言をする。


Y美「Aちゃんさ、あんなに先生と会えるってはしゃいでいたじゃん。

さっきはすぐに寝ちゃったし、せっかくだからあたしの所に座りなよ」

なんとY美のすばらしいフォロー。


A子「うん、先生の隣がいい!」

無邪気なA子の反応。

予想もしていなかった展開だ。

K太は自分の作戦が失敗に終わったことに顔を引き攣らせながらも、「そ、そうだね、Aちゃんは先生の隣がいいね」と言いつつも明らかに不満そうだった。


2年前に見たA子はまだまだ子供の顔つきだったが、ハタチになったA子は幼いながらも大人の魅力も感じさせる女になっていた。


A子「何を歌おうかな~、先生とデュエットもいいなぁ」

嬉しそうに曲を探すA子。

大きくはないけどTシャツ姿のA子はおっぱいの形がはっきりわかる。

相変わらずのショートカットで白い首筋もセクシーだ。

そんなA子に興奮してしまった俺は不覚にも勃起してしまった・・・。

これでデュエットってなったら股間を膨らませて歌うことになる・・・そんな姿をA子に見せられんなぁ・・・と余計なことは考えないように頑張る俺。

が、A子はそんな俺の心配をよそに、俺の腕にもたれかかるようにして近づいてきた。


A子「ねぇねぇ先生、この歌知ってる?」

A子は曲のタイトルを見せるようにグッと近寄ってきた。

急に縮まるA子との距離感、A子の髪から匂うトリートメントの香り、俺の腕に触れるA子の腕。

彼女と別れて半年ほどの俺にとっては十分すぎる刺激だった。

否応なしに反応する我がムスコ。

カラオケの曲目リストの下に置かれる俺のムスコは、そのリストを押しのける勢いで誇張していった。

俺のムスコのせいで不自然に盛り上がるリストにA子は何か察したようだ。

A子は無言で体を離した。


(・・・終わった・・・。

A子にとんでもない醜態を晒してしまった・・・)

『先生』と慕ってくれたA子。

男関係がどうであったかは聞いたことはない。

俺の反応に気がついたということは、そういうことは知っているということだろうし、俺の股間がどういう状況だったのかも理解していただろう。


恐る恐るA子の顔を覗き込む・・・A子と視線が合う・・・。

A子はニコッとすると、すぐさま曲探しに視線を戻した。

この“ニコッ”の意味はまったく理解できなかった。

しかもA子はその後も何度も同じように体を寄せてきた。

俺は自分の失態にややぎこちなかったと思うのだが、A子はまるで普通だった。

・・・女はわからん。


A子と何曲か歌ったあと、二次会もお開きに・・・ということになった。

時間はすでに最終電車の直前だった。

ここでK太とA子、俺とS子、Y美が残り3次会へ。


「朝まで飲もう!」と深夜営業の居酒屋に足を運んだ。


K太はここぞとばかりにA子の隣を陣取る。

あまり大人気ない行動もしたくないし、Y美もカラオケの件もあって何も言わなかった。


結果として俺の両隣にはS子とY美という両手に花の状況。

A子も、「先生いいなー、美女に囲まれて!」とからかう。

確かに気分は悪くない。

Y美とは初対面と思えぬくらいに話が弾む。

実はY美には仕事で『表計算でどうしてもわからない数式がある』と相談されてことがあり、何度もメールでアドバイスを送っていた。

必然的にその話が中心となり会話が弾む。


それを聞いていたS子が、「Mさん、パソコン関係のお仕事なんですか?」と聞いてきた。


俺「いや、全々違うよ。

機械系の専門学校で技術を教えている」

S子「それにしても詳しいですよね」

俺「学校ってテストがあったり成績つけたりするでしょ?特に成績管理は表計算を使わないと仕事にならないんだよ」

パソコンが普及し始めの頃とはいえ、会社には表計算ソフトがいくつかあった。

ただ使いこなしているのは数人。

入社早々、仕事の少なかった俺は表計算とデータベースソフトで成績入力から就職時に使う調査書までを一括で管理できるシステムの作成をしていたのだ。

またエロゲー目的とはいえ、中学時代からコンピュータに触れていたし、数学の授業で面倒な関数の計算はポケットコンピュータにプログラムを組んで楽をしていた。


そんな話にS子が、「今度、教えてもらえないですか?」と聞いてきた。


S子は実は俺と同じ県に住んでいた。

断る理由もないから、「いつでもいいよ」と即答する。

横で聞いていたY美は、「Mさんの個人授業なんて羨ましい~」と冷やかした。


『個人授業』と聞くとAVのタイトルにもありそうだが、よく考えれば男と女が2人っきりというのは結構おいしいシチュエーションではないかと思ってしまった俺は調子に乗ってY美に言った。


俺「なんならY美にも教えてあげようか?」

Y美「えっ、本当?お願い~。

直接聞きたいことがたくさんあるの」

予想外の返事だった。

パソコンができると得すること多いなぁ・・・と思ったのは言うまでもない。


Y美とS子の個人授業についてはまた機会があれば書きたいと思います。

直接エッチに発展することはなかったのですが、俺の股間を十分熱くする出来事がたくさんありました。

またS子とはこれとは別においしい思いをしておりまして・・・。


気づけば正面ではK太とA子がいい雰囲気になっていた。

地方から出てきたA子、このあとどうするのか判らなかったのだが、なんとA子はK太が予約したシティホテルに泊まるとのこと。

さらにオフ会参加のための費用(飛行機代からホテル代まで)を、K太が面倒を見ていることがわかった。


A子との関係は俺が一歩リードしているつもりだったが、実はK太は2歩も3歩も俺を引き離していた。



時間は4時を回り始発電車が動き出した。

日曜日ということもあって人影もまばらだ。

楽しかったA子との1日が終わる。


(今度A子と会えるのはいつかな・・・)

そう思いながらA子と最後の会話を交わす。


A子「これからK太さんにホテルまで送ってもらうの」

K太がそのままホテルに泊まるということは簡単に想像できた。

A子もその覚悟はあったようだ。

俺の顔を見るとちょっと泣きそうな顔になっていた。

俺と目を合わせることもできない。

(K太に負けた・・・)という悔しさもあり、俺は返す言葉が出てこなかった。


俺「うん、今日は楽しかったよ、また会えるといいね」

そう言った俺にA子が近づいてきた。


A子「先生、ちょっといいですか?」

そう言うとA子は俺の耳元で囁いた。


A子「先生、心配しないでいいよ、K太はただの友達だからさ」

俺はその言葉を信じるしかなかった。

Y美とS子と3人でK太とA子を見送った。


S子「A子、K太とやっちゃうのかなぁ」

Y美「ばか、そんなこと言うな」

S子は俺のA子に対する気持ちは知らないようだ。


Y美「あの子、そんなに軽い子じゃないよ」

S子「そうかなー、K太はA子にぞっこんだし、ホテルに行くってことはヤルってことでしょ~」

Y美「M君さ、A子のこと好きなんでしょ?何で止めなかったのさ。

A子もそれを望んでいたんじゃない?」

俺「・・・」

何も言えなかった。


Y美「さっきA子、耳元で何か言っていたじゃん、何って言ったの?」

俺「『心配しないで、K太は友達だから』って・・・」

Y美「そっか、じゃあ大丈夫だよ、あの子、ああ見えてしっかり者だからさ」

今なら携帯電話ですぐに連絡取れるだろうが、当時は携帯電話なんて持っている人はほとんどいなかった。

俺はどうすることもできずA子の言葉を信じるしかなかった。


次の日の夜、A子は飛行機で地元に帰っていった。

夜になってA子からメールが届く。


A子『先生、ただいま。

さっき帰って来た。

すぐにメールしました』

すでにA子は2人のチャットルームで待機していた。

K太とのことを聞くのはヤボだと思っていたが、A子の方から切り出してきた。


俺と別れたあと、駅前のシティホテルに2人で入ったそうだ。

予約していたのはちゃっかりダブルの部屋だったそうで、したたかなA子はフロントで、「あたし1人なんで、シングルでいいです」と勝手に部屋を変えてさっさと1人で部屋に行ってしまったそうだ。

フロントに取り残されたK太はお金だけ払ってそそくさと帰っていたという・・・。

女は怖い・・・。

飛行機代にホテル代まで出させておいてこの仕打ち。

当然だがK太は納得できるはずもなく、激怒のメールを送ってきたそうだ。

それをA子は、『あんた勘違いしていない?』みたいな冷たい返事であしらったという。

それ以来、K太がA子のサイトに訪れることもなく、K太が主催だったオフ会も行われることはなくなった。


A子は俺のことをどう思っているのか確かめる度胸もなく、またいつも通りの日常に戻っていた。

それから1年の時が過ぎたある日、A子から衝撃のメールが届いた。


『結婚しました』

(な、何~?!)

驚きはそれだけではなかった。


『もうすぐ赤ちゃんが産まれます』

言葉を失った。

この1年、A子とメールをしたりチャットをしたりする日々は確かに少なくなっていた。

それでも週に1度のペースでメールは交わしていた。

結婚はおろか、男の影すら感じることもできなかったのに・・・。

A子は隣の県に住む男と妊娠をきっかけに入籍していた。


(終わった・・・本当に終わった・・・)

そう思った瞬間だった。


しかしA子とはそれ以来、以前にも増して頻繁にメールをするようになった。

仕事のこと、ダンナのこと、赤ちゃんのこと、俺は相変わらず『先生』だった。

A子はよく悩んでいた。


『仕事で車をぶつけました』
『寝坊して遅刻しました』
『ダンナと喧嘩しました』

その度に俺は親身になってA子にアドバイスを送っていた。


A子『先生がいなかったらあたし、すごく困っていたと思うの』

その言葉は素直に嬉しい。

でも、それが恋愛対象ではないのも明らかだった。


それからまた1年ちょっとが経過した。

俺は26歳、A子は22歳になっていた。

A子の子供も1歳になっていた。


A子がメールではなくチャットをしたいと言い出した。


俺『悩みならメールでもらって返事するよ』

A子『・・・とチャットがいい』

深刻な話だろうと察した俺はすぐにチャットに応じる。


A子『あたし、離婚します』

これまた衝撃的な告白であった。

結婚して1年ちょっとだ。

聞けばダンナの浮気が原因らしい。

詳しく聞くとダンナは当時、彼女がいたそうだ。

しかしオフ会で会ったA子に一目惚れ。

彼女と付き合いつつA子にも手を出していたのだ。

A子はそのダンナに俺と一緒にいるような安心感を覚えたとのことで、体を許す関係になるまで時間はかからなかったそうだ。

若かったA子は避妊に対する知識も乏しく、為すがままに受け入れたようで、付き合って2ヶ月ほどで妊娠が判明。

ダンナは責任を取る形で結婚することになったようだ。

しかし本命の彼女がいたダンナにとって、A子と結婚すれば済む問題ではなかった。

A子に寝取られた形の彼女は結婚後も執拗にアプローチを続けていたようで、会うたびにセックスもしていた。


そんな浮気が発覚した原因が、彼女からのメールだったというから驚く。

ダンナとのメールのやりとりをすべてA子に転送。

ダンナに問い詰めるA子。

その日以来、ダンナがA子のもとに戻ることはなく、間もなく判の押された離婚届が届いたという。

養育費の話もなければ慰謝料の話もない。

幸いA子の父親はそれなりに地位のある実業家であったため、金なんてどうでもいいから一刻でも早く実家に戻って子供とともに生活しろと言われたという。


(あわよくばA子といい関係を・・・)と思い続けていた俺はA子を呼び出した。


ちょっとオシャレなシティホテルのツインルームを予約した。

A子は、「こんなホテル初めて」とはしゃぎながら部屋に入った。

(あのK太が予約したホテルよりも数倍高いホテルだ)
部屋に入るなり、俺はA子に抱きついてしまった。


A子「セ、先生、やだ・・・」

俺「好きだ」

A子「えっ・・・」

気がつくと俺はA子にキスをしていた。

いきなり俺に抱きつかれて驚き、体に力が入っていたA子だが、すぐに体の力が抜ける。

時間にして10秒程度だろうか・・・唇を離すとA子は照れくさそうに言った。


A子「先生って意外と大胆なんだね」

実は俺自身が一番驚いていたりする・・・。


A子「あたし、バツイチ子持ちだよ」

俺「そんなの関係ないよ」

A子「ホントかなぁ・・・」

着ていたTシャツとジーンズを脱がす・・・ブラに隠れた小ぶりのおっぱい。

白いブラとお揃いのパンティが刺激的だ。

トランクス1枚になった俺とA子はそのままベッドで抱き合った。

出産で乳首が黒ずんでしまったとブラを外すことを拒んだA子。

ブラ越しにおっぱいを揉む。

小さいといっても子供を産んで少し大きくなったというおっぱいは柔らかかった。

ブラの隙間から手を滑り込ませる。


A子「ダメだよぉ」

搾り出すように小さく声を出すが、その声は聞きなれたA子の声ではなかった。

ブラのホックに手をかけるが、ふと我に返ったように無言で拒否するA子。

俺の意識を逸らすかのようにトランクスの上から俺のムスコに触れるA子。

もちろんこれ以上にないというくらいに硬直している。

A子は何も言わずに優しくしごくように上下する。

スルリと手がトランクスの中に入り込む。

ちょっと冷たいA子の指先がムスコに触れた。


A子「先生・・・」

そう言うとA子は唇を重ねてきた。

A子の下半身に手を伸ばす。

しかし俺が手をパンティに触れると同時に手を押さえつける。

仕方なく手を遠ざける・・・そしてまた近づける・・・が、また拒否される。


A子「これ以上はダメだよ」

手コキだけでも十分といえば十分だが、この生殺しのような状況にいつ理性が飛んでもおかしくない俺。

俺のトランクスを脱がしたA子は両手で俺のムスコの愛撫を始める。


A子「ふふ、こんな可愛い先生って初めて見るね」

いたずらに微笑みながらA子の手の動きが速くなる。


俺「口で出来る?」

A子「んー、ダメ。

お口はダメ」

俺「なんで?」

A子「ダメなものはダメです。

それより先生、これからどこか遊びに連れて行ってください」

俺「うん、いいよ」

そう言うとA子はそこで手コキを止めてしまった・・・。


俺「えっ、A子・・・」

そそくさと服を着るA子。

そうだ、A子はこういう性格だ。

一人素っ裸で股間を大きく膨らました俺はとても間抜けに見えた。


A子「先生、いつまでもそんな格好じゃ風邪引くよ」

後になってわかることだが、A子はダンナに対しても、“抜いてあげる”という行為はしたことがなかったそうだ。

自分が風俗嬢のように相手を射精させるという行為はどうしてもできないらしい。

それもダンナとの離婚の原因のひとつでもあったようだ。


そして驚いたのは、A子は妊娠がわかってから、ダンナと一度も肌を合わせたことすらなかったという。

元々セックスが好きとは言えないA子は、ダンナと付き合い始めてすぐに関係は持ったが、その後はほとんど体を許さなかったという。

すぐに妊娠したA子は、ダンナとのセックスはおそらく両手で足りるくらいではないかと言っていた。

なるほど、ダンナが元彼女とよりを戻したくなる気持ちもわかる。


2日間を共に過ごしたが、そんな会話もあって、俺はA子にそれ以上手出しをしなかった。

お互いの気持ちがないのに一方的な欲望を押し付けては人間関係にヒビが入る。


A子「先生、1ヶ月後にあたしのところに遊びに来てね。

そこで2人の気持ちが今と同じなら付き合おう」

そう言ってA子は帰って行った。


そして1ヶ月後。

A子の所に行こうかという話を10年近く付き合いのある友人としていた。

この友人はA子のことも知っており、俺がA子と関係を持とうとしていたことも知っていた。

そんなA子に相談を持ちかけられた友人だったのだが、お互いに電話やメールで相談したりアドバイスをしている中で、お互いに恋愛感情が目覚めていたのだ。


友人「悪い・・・お前とA子のことは知っていたんだが・・・」

この友人とはかつて自分が狙っていた女を横取りされた・・・というようなことがあり、それで恨みがあったわけではないのだろうが、友人にとってはA子の存在はまさにそのリベンジ・・・とも言えるものであった。


A子にすぐに電話をする。


A子「先生、ごめんなさい。

やっぱり先生は先生だから・・・」

俺の告白に戸惑い、一時は本当に付き合おうと決心したらしい。

しかしA子は信頼していたはずのダンナに捨てられ、男性不信に陥っていた。

そんな中、バツイチである友人の助言は誰よりも説得力があり、次第に惹かれていったという。

もっとも俺自身も冷静になると、バツイチ子持ちの女を養うほどの勇気と責任感があったのかというと、正直、その場の勢いであった部分も多かった。

(ヤったらおしまい・・・みたいな)
だから俺は会いに行く決心はしていたが、それは断りのケジメをつけに行くつもりだった。

それにこの頃、俺には別の気になる存在の女性がいた。

本気で愛した女であれば、はらわたが煮えくり返るほど腹立たしいことなのだろうが、俺は友人に対してそれほどの怒りは持っていなかった。

そうは言っても俺の知らないところで話が進んでいることに気分がいいことはなく、その友人とはそれから1年の間、連絡を取ることもなくなっていた。

友人と別れ際に、「A子はこちらの予想を遥かに超えるしたたかさで自分勝手な女だから気をつけろよ・・・」と忠告をした。


A子とはそれからもしばらくはメールをしていたが、気がつくとA子からのメールは届かなくなっていた。

そんなことも気にならないほど、A子に対する俺の気持ちは冷めていた。

友人と連絡を取らなくなって1年ほど過ぎた頃、連絡があった。


友人「お前の忠告、まさにその通りだったな。

あいつは手に負えん・・・」

結局、友人もまたA子と別れることになったという。

実はA子は俺たちの住んでいるところから1000キロも離れた地に住んでおり、会いに行くにもお金も時間もかかった。

それでもA子に1年の間に4~5回会いに行ったという。

しかし、そんな遠距離関係が長く続くわけもなくA子から別れを切り出されたという。


久しぶりにA子にメールを送ってみた。


A子『先生、久しぶりです~』

出会った頃と変わらぬA子がそこにいた。

聞けばA子は1人の男に縛られるよりも自由に遊びたいという。

バツイチ子持ちの自分はもう結婚する気もなく、そんな自分でも気軽に相手をしてくれる近くにいる人と楽しみたいそうだ。

遠くから時間もお金もかけて遊びに来てくれる友人よりも、近くにいる身近な人の方が気が楽という理由。

ホントかウソかわからないが友人にもカラダは許しておらず、この先も他の男にカラダを許すつもりはないと言う。


そしてA子は今の気持ちを話してくれた。

これまでネットで知り合った人たちとの出会いは忘れたくない。

でも、そこで出会った人の優しさに触れるとまた甘えてしまうくらい自分は弱い。

そうならないように環境を変えてゼロからスタートしたいと思った。


A子『おばあちゃんが住むところに引っ越すことが決まったの』

そこにはネットもパソコンもないと言う。

それはネット依存であったA子には相当の覚悟が必要だったはずだ。


それからしばらくしてからメールを送信してみたが、あて先不明で戻ってきた。

勇気を出してかけた携帯電話も、「この電話番号は現在使われておりません・・・」というメッセージだった。


A子と音信不通になって何年になるだろうか・・・。

俺は今でも、『先生』と慕ってくれたA子の笑顔を思い出す。
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