0218
5年以上前の体験。

俺は当時、終わるのが夜遅くなる職場にいて、独身でもあったため仕事が終わると毎日のように誰かとファミレスに行き、夕食がてら日が変わる頃までダベっていた。


その中でも最も多く俺に付き合わされたフリーターの男と、いつものように深夜のファミレスで夕食後のドリンクバーで粘っていた時のこと。

男ならわかるだろうが、行きつけ店なら顔なじみで気になるウェイトレスのお姉ちゃんの1人や2人はいるもの。

毎晩のように顔を合わせている俺たちは話題も尽き、そんなウェイトレスの品定めくらいしか話すこともなくなっていた。


その日、我々はいつものように店に入って席に着いた。

(顔なじみ過ぎて、もはや「何名様ですか?」とも訊かれなくなっていた)
ところがその日は、この時間帯には珍しく混雑していて少し待たされた。
やっと席に案内され、友人と「大人数のグループでも入っているのかねえ」などと話していると、ちょうど隣のテーブルを片付けていたウェイトレスが、「そうなんですよ~、すみません」と声を掛けてきた。


俺たちは別に周りに聞こえるように言ったわけでなく、ましてや店側に不満を述べたわけでもなかった。

俺たちの会話に急に入ってこられ、むしろ俺たちが驚いて、一瞬黙ってしまった。

ちなみに、顔なじみとは言っても大手チェーンのファミレスである。

こちらの毎度の要求にちゃんと応えてくれることはあっても、店員がフレンドリーに話し掛けてくるなどはさすがになかったのだ。


たじろぎながらも一応、「ああ、そうなんですか~、大変ですね」と店側を労う言葉を掛けた。

そのウェイトレスは、「ほんとすみません~、ごゆっくりどうぞ」と、片付けを終えて去っていった。

その日もドリンクバーでだらだらと過ごそうと思っていた俺たちだったが、たった今起こった出来事の分析に取りかかった。


「どういうことだろうか?」

「いや、たまたまだろう、事務的なお詫びに過ぎない」

「まあ、そうだよな」

などと勝手に完結し、いつものようにドリンクバーを注文した。

当時、ドリンクバーは今のように自分で好きに飲み物を取りに行くスタイルでなく、その都度注文をしなければならなかった。

まず初回の注文のために呼び鈴を鳴らすと、先ほど俺たちに声を掛けてきたウェイトレスがやって来た。

しかも、こちらが何も言ってないのに・・・。


「ドリンクバーでよろしいですか?お飲み物はいつもので?」

呆気に取られながらも、「はい、それで・・・」と答えた。


こうなったら偶然では済まされない。

友人と顔を寄せ合い、「なんかおかしいぞ」「俺たち、何かしたか?」「騙されてるのかも」などとさらに状況分析にかかった。


そんなことを囁き合っているうち、件のウェイトレスが飲み物を持って来た。

しかも、いつも必ずアイスティーにガムシロを2つ注文する俺に対しては、「ガムシロップ2つでよろしいですね?」と笑顔でガムシロを2つを添えてくれた。


他に話題のない俺たちは、もう今の出来事への対応を検討するモードに入っていた。

ところでこのウェイトレス、実はあまり可愛いとは言い難く、よく見る顔ではあるのだが、他の可愛い娘の陰に隠れて俺たちの眼中には正直あまり入ってはいなかった。

それに俺たちと接する頻度の高い娘は、もっと他に何人かいたのである。

だからこそ、「なぜこんなにフレンドリー?しかも今さら」という俺たちの疑問はもっともなことであった。

そんなことを囁き合いながらも俺たちは順調にドリンクを消費していったのだが、今日はもはや飲み終わっても店員を呼ぶ前に件のウェイトレスが頃合いよくやって来るという状況に。


で、何度目かの注文聞きの時、俺と友人がテーブルの上に置いていた携帯を見たウェイトレスが、「携帯2台持ってるんですか?すごいですねー」と驚いてみせた。

俺はプライベートと仕事で、友人は普通の携帯とPDAをそれぞれ所持していたのだ。

どっちに言ったのか判らなかったが、「まあ仕事とかでね」と、たどたどしく俺が答えた。


するとさらに、「そのストラップいいですね~」とウェイトレス。


それは誰かに貰ったサンダーバード2号のミニチュアだった。

そんなにいいか?と思ったが、「いえいえ、ありがとう」と、一応お礼を言う。

すると、「ではごゆっくり」と、ウェイトレスは去っていった。


そのやりとりを見ていた友人は、「間違いない、あの娘はお前に対して話し掛けている」と言う。

さらに、「俺は完全に無視されてる。

あの娘のターゲットはお前だ」と言い切る。

何のターゲットだかw

「そうか?そんなこたあねえよ」と否定する俺に、「じゃあ2人のメアドをあの娘に渡してみよう」と言う友人。


俺もこの展開が怪しくも面白く思っていたので、早速実行に移す。

あからさまに口頭やメモでは仕事中の彼女に迷惑だろうから、ナプキンにメアドを書き、彼女を呼んで「これ下げてもらえる?」と言って、折り畳んだナプキンのメモに気付くようにわざとらしく手渡した。

手渡した瞬間、ナプキンのメモに気付いた彼女は一瞬ニヤッとし、「かしこまりました、お下げします。

あとドリンクのお代わりはいかがですか?」と平静を装った。

俺と友人は成功を目で喜んだ。

あとは彼女からメールが来るのを待つだけだ。


しかし、メモを渡したからと言って彼女がメールをくれるとは限らない。

まあ期待半分で小一時間過ごした。

すると俺の携帯にメールの着信があった。


『アドレス渡されてビックリしましたけどメールしちゃいました。

いつも来て下さってありがとうございます。

私は◯◯◯子と言います。

今上がって、帰る支度中です』

友人が、「やっぱりお前だ!返事しろ!早く!」と急かす。

俺もまあ他愛のない返事をし、少しの間、メールでのやり取りをした。

彼女も帰ったし、俺たちも眠くなってきたので店を出た。


帰りは彼女とメールをしながら。

メールによれば彼女は近くに住む専門学校生で、店にはバイトで来ているとのこと。

恋人はいないようだ。


そうして何日かポツポツとメールのやりとりをしていたが、彼女は学校の試験中とかで店には顔を出さなくなっていた。

ある日、たまたま仕事で早い時間帯にその店のそばを通りがかったので、思い出して彼女にメールしてみると、『お店で試験勉強をしています』と言うではないか。


『もし、このあと時間あったらドライブしない?』とダメ元で誘ってみると、『嬉しい!すぐ行きます』と店を出て来た。


すぐ車に乗せ、身の上話などしながら付近をドライブ。

あまり可愛いとは言い難い彼女だったが、俺に対してそこまで健気にいてくれたことが愛しく思えた。

だが一方で、何かの宗教の勧誘じゃないだろうなという警戒心もないわけではなかった。


しかしそんな杞憂も無駄なほど楽しく過ごし、少し行ったところにある湖のほとりに車を停めた。

車の中で俺が迫ると、「そんな・・・今日初めてデートしたばかりなのに・・・」と困った顔を見せながらも拒否はなかった。

そのままキスして乳を揉んで・・・湖畔にあるラブホに入るまでそう時間はかからなかった。


セックス自体はとりたてて特筆すべきことはなかったので省略するが、彼女は細身で貧乳ではあったが締まりは抜群で、生理前だというので2回ほど中に出させてもらった。

フェラはぎこちなかったが一生懸命で愛おしくなってしまうほど。

夜遅かったし試験勉強のあるだろうからと、俺が気遣ってショートタイムでホテルを出た。

家の近くまで送って別れた。


しかし・・・。

翌日以降、俺がメールしても返事はなく、また店に行っても彼女の姿はなかった。

彼女がどうしたのか店に訊くわけにもいかず。

その後、その店で彼女の姿を見ることは二度となく、またメールの返事もないまま、どうやら終わった。

俺のセックスが下手だったからだろうか・・・。


当時から今に至るまで、出会い系やSNSでは結構な数の女とヤっている俺だが、こんな出会いは後にも先にもこれっきり。

まして大手ファミレスでこっちからではなく店員からのアプローチなど聞いたことがない。

そういう意味で、俺的には信じられない話であった。


おしまい。

長文スマン。

サンプル