0119

レズに走った私の思い出話をしようと思う。

私は当時、処女で恥ずかしかった。

友達の彼氏の話題にもついていけなくて悲しくて。

それまでに一度だけ付き合った男の子がいたけど、エロ的な要素が見えると引いてしまって・・・。

結局、別れた。

かなり怖がりだし、自信もなかったし。



ある日、偶然レズビアンのサイトを見つけてしまった。

男性恐怖気味だったのと興味本位で、それを開いた。

そこに出会い系掲示板があって、つい書き込んでしまった。

別に出会いたいわけでもなく、なんとなく・・・って感じで。


そしたら返信が鬼のように来てビックリした。

今の私なら出会い系ってだけで遠慮しますだけど、当時はそういうの知らなくて、いっぱいメール来たー!って喜んでた。

バカみたいに。

でも返信メール読んでも何だかよくわからない言葉あるし、別世界を覗く感じで楽しむだけだった。


そんな遊びをしてたら、ある日突然、後輩(♀)に告白された。

後輩は弟の同級生。

びっくりした。

タイミング的にも。

確かに、あのサイトを頻繁に見るようになってから、私は女の子にやたら目が行くようになってた。

巷によくあるレズアニメとか漫画も(キレイ目なやつに限り)目を向けてた。


後輩は、容姿はハーフっぽくて色白で美人だった。

だからびっくりした。


(そんな子が、なんで私にって?)って。


後輩は女子高でした。

で、その容姿のせいで、かなりモテモテだったみたい。

ちなみにその子は弟とは中学のときの同級生。

で、私が大学生のときにもたまに家に遊びに来てた一人。


私は、あのサイトを見ていたせいもあってか翌日にOKを出してしまった。

まずこれがダメだった。

でも相手はキレイな美少女だし、私は私で当時は女の子にしか目に入ってなかったから。

まさに食いついた感じで。


それで付き合った。

相手は美少女だったけど、タチだった。

しかも、かなりの我儘。

まあ女子高で周りからチヤホヤされてたから仕方ないか、と初めは我慢した。

女の子と付き合うのは初めてだし、男の子とも一度だけという負い目もあった。


今後、その美少女を『A』としますね。


Aは、私がOK出したら凄く喜んでた。

でも、女相手のキャリアは向こうが上だった。

私は二つ年上だったけど、ネコにされた。

つまり主導権はあちら。


Aの容姿に私は惚れた。

色白でスラッとしてショートカットがよく似合ってた。

あくまでも、私は女としてキレイな女が好きだったんだけど、付き合いだすと違った。

かなり我儘だった。

びっくり。

Aは見た目ハーフっぽいのに、たまに「ワシ」とか「俺」とか言うし。

さらに、付き合った女遍歴自慢。


でも、精神的に上かというとそうでもない。

男性の都合のいい所だけを頂いた俺女みたいだった。

家事や細々したことはお前の役目。

自分は何もせず堂々てしてるのが仕事、みたいな。

実際は、男性の方が優しいし包容力あるのに、何しろ私は男性経験一人だし、すぐ別れたからよくわかってなかった・・・。


Aと付き合いだした頃は楽しかった。

Aは専門学校に行き、私は大学とバイトで、いつも夜に会ってた。

Aのことは、そのときは好きだった。

だから毎回オシャレして、Aが髪型を誉めてくれただけで有頂天になってた。


付き合ううちに、Aが色んな所に出入りしてるのがわかった。

ビアンのイベントとか、クラブとかバーとか。

私もそれに同行するようになったけど、なかなか馴染めなかった。


特にバーには毎週連れて行かれた。

普通のバーじゃなくてビアンバーだけど。

そこは知らない世界で新鮮だった。

みんなリア充満喫!って感じでやたらテンション高いし、私は見た目大人しめだったし馴染めなかった。

でも毎週行ってれば顔見知りも増えるし、とにかく私は溶け込むのに必死だった。

バーのママは男みたいで、最後まで馴染めなかったけど・・・。

不思議な空間で、女ばかりでみんな女好きって趣味のせいか距離感がない客が多かった気がする。

しばらくしたら客の中にも仲のいい人も出来てきて、ママは営業で私を誉めてくれるからAも気分良かったみたい。

Aは私といるときは俺様気質だけど、そんな中にいるときはやたら腰が低かった。

半年くらい付き合ってたら、そんなAを見るのが嫌になってきた。


ある日、ふと以前見つけたビアンサイトを開いてみた。

Aと付き合ってからは全然見なくなってたけど、ふと。

そしたら、出会い系掲示板の中にAらしき人物の書き込みを見つけてしまった。


『彼女募集中』だってさ。


浮気される者の気持ちがこのときわかった。

喪失感とか怒りとか焦燥感とか・・・よくわからないものがこみ上げてくる。

女同士だし~、結婚してる訳じゃないし~みたいなノリなんだろうけど、だからって相手の気持ちを踏みにじっていいのか?みたいなの。


今思うと、ビアンの世界ってそんな感じだった。

なんか薄っぺらい。

私がたまたまそんなのばかり見たのかも知れないけど、男女間でもよくあることなんだろけど。

バーやイベントで会う子達も仲良しっぽく振る舞ってたけど、あの変なテンションはリア充っていうより悲壮感さえある。


念のため、Aに確認した。


「掲示板に書き込んだ?」って。


A「あ、見つけた~?あれ、冗談で書いてみただけ。

てか自分、なんでそんなの見てるの?浮気するつもり?」

逆ギレされた。

Aには日常的に不満も溜まってたので私は一気に冷めた。


ここで復讐を試みることにした。

自分はネコだと思ってたけど、違和感を覚えてた。

なのである日、Aをこちらから襲ってやった。

面白かった。

違うものに目覚めた。

でも、自分は『リバ(タチ・ネコどちらもいける人のこと)』だと思う。


Aは初めは嫌がってた。

けど、だんだん良くなったみたい。

初めは面白かったけど、そのうち飽きた。

Aがマグロだから。

そうこうするうちに、Aから求めてくるようになった。

お陰でテクニックを磨けました。

まあ女の子相手に使うことはもう二度とないけど・・・。


そこで件のビアンサイトを開いた。

自分の住む地域限定で友達を募った。

恋愛対象は求めなかったから、リバとかバイとか書いたけど。

それでも構わないよーって人がいっぱいメールをくれた。

私はその中から、気の合いそうな人を探した。

恋愛目的じゃないって言ってるのに、身長体重、スリーサイズまで聞いてくる人もいたけど。


で、何人かと仲良くなって話すうちに私は、『Aって知ってる?』みたいな話を振った。

Aは色々出入りしてるから顔見知りくらいはいるかと思って・・・。

そしたら、『こないだ、この掲示板で出会って告られたよ』とか、色々遊んでることが発覚。

さらに、私とのデートをキャンセルしてまで、ここで知り合った子と遊んでた・・・。

笑うしかない。


私はもはやAに恋愛感情はなくなってた。

(どうしてやろうか)しか頭になかった。

この時点で、自分は彼女でもなんでもないと悟った。


そして、これまで以上にAをエッチで攻めてあげた。

もうAはタチではなかった。

私にねだってくるのを、さんざん焦らしてイカせてあげた。

我儘も聞いてあげた。

優しくした。


頃合いを見て、「別れよう」と言ってあげた。

そしたらAは急に取り乱した。

ふだんは俺様で上から目線なのに、とりすがって来たから、「浮気してるよね?」「てか私、彼女じゃないでしょ」「私も掲示板で色々わかったよ」「あのとき、あそこにいたよね?」とか並べて話した。

Aは駄々っ子みたいになってしまい、さらに冷めた。


A「でも私、◯◯(私)のもとにいつも帰って来てるし!」

アホかと思った。

それが通るなら世の中に浮気問題も修羅場もないわ。

Aの服を脱がせた。


私「これキスマークだよね。

私、こんなとこにつけてないし」

今度は無言。

笑いが止まらない。

内心は泣けたけど。


浮気大好きなAだけど、私の浮気にはいつも目を光らせてたのも、しんどかった。

普通の学生友達と遊んでるだけなのに浮気を疑うし、果ては遊んでるときに数分単位でメールしてきたりとか。

(あんたと一緒にするな!)と思ったけど、浮気する人は相手も浮気すると思うのかな。

悲しいね。

自分はいいけど、相手はダメとか。

Aは容姿に恵まれたせいで、まともな価値観を身に付けられなかった可哀想な子だった。


Aにされたのと同じことをして別れようと思った。

その頃、私に告白してくれた人がいた。


「今付き合ってる子がいる」とは伝えた。


事のさわりの部分だけも話してた。


告白してくれた人(B)は、「踏ん切りがつくまで待つ」と言ってくれた。

Bとは友達として付き合うことにした。

ちなみにBは男性だったから、当時の私の恋愛対象外だった。

Bは稀に見るいい人で、頭もよくて冷静で色々相談にも乗ってもらった。

Bが優しいのと、おおらかというか、全部わかってるけどまぁ聞くよみたいな感じで、私は参った。


B「Aとはまだ切れないの?」

聞かれる度に辛かった。

私はAへの復讐の為にAと同じことをするつもりだったから。

そんなことは、とてもBには言えないし。

あくまでもBには友達のスタンスを保ち、Bにもそれを伝えるだけ。


その裏で、私は彼女を探すことにした。

恋愛対象が欲しかった。

Aには別れを告げた時点で別れたはずだったけど、頻繁にメールが来たり家に来たりで、なかなか切れなかった。

変な焦りがあった。


ある日、イベントで一目惚れした人がいた。

酒が入ってるのと、暗い照明のクラブだからか、お互い補正がかかって意気投合した。

それがC。

Cとはメアド交換した。


C「巨乳だよね~」

私「カッコイイね~」

みたいな下らない話題で盛り上がっただけだったけど。


Cとはよくメールするようになった。

Cは年上で社会人だった。

年上なせいか社会人なせいか、私はCに憧れが芽生えてきた。

しかもCは本当にカッコよかった。

Aほどの美形ではないけど、迫力というか存在感があった。

私はだんだんCを好きになってた。


ある日、Cから付き合って欲しいと言われた。

私は嬉しくて仕方なかった。

その頃は私もCしか頭になかったから。

Aのことを忘れてた。

Aはその頃ストーカー化していて、私の家の前にいたり電話し掛けてきたりとかしていた。

さすがに家に来たときには対応せざるを得ない状態みたいな感じだった。


仕方なく私は、「もう別れたでしょ。

私も付き合ってる人がいるから」と言った。

実際は、私はまだOKの返事は出してなかったけど、Aを撒くためにそう言った。


これが悪かった。

Aのビアン業界での存在を甘く見ていた。

Aは私より年下だけど、ここでは古株だし、顔も広い。

すぐにAにCの存在を突き止められてしまった。

私はその頃、何も知らずにCとラブラブメールしたりデートしていた。


Cと付き合おうか、って時にAが動き出した。

バーかイベントでかは知らないけど、AがCに接触して私の悪口を言いふらしたらしい。

私が浮気ばかりだとか、どんだけ最悪の女だとか、素晴らしい捏造話を。

私は又聞きでそれを知ったのだけど。


慌ててCに連絡したら、「◯◯の噂聞いたよ。

そういう女なんだ」ってスッパリ。


確かに、Aに復讐しようとか変な考えを持ってた私も悪かった。

だけどAとは別れたはずだし、Aに私の次の恋の邪魔する権利なんてあるの?
元はあんたの浮気が原因なのに、なんで私が浮気性みたいな噂を立てるの!
怒りで夜も眠れなくなった。


結果、Aの方が一枚上手だった。

Aは私がショックから立ち上がれないうちに次の彼女を見つけて私に見せびらかしに来た。

Aもその彼女とすぐ別れたらしいから、それだけが救い・・・。


こんな下らない戦いをしてる間も、Bとはずっと交友関係を続けていた。

Bにはもう一部始終を話した。

それでも動じなかった。

私を好きだと言ってくれた。

涙が出た。

こんな人がいるのかと。

私はBに関心を寄せるようになってた。

あくまでも友人としてだけど。


Bは私のセクシャリティやら汚い部分を話しても、変わらず「それでも好きだよ」と言ってくれた唯一人の人だった。

Bの態度を見て、そんな人いるか?といつも思ってた。

Bは男だから恋愛対象外だったけど、もしかしたら凄い男かもとおののきもした。


Bとは同じ大学に通ってて、同じ方面を専攻してた。

その後、Bとはどんどん仲良くなった。

Bの家にも遊びに行ってた。

Bの本棚を見るのが好きだった。

Bの本棚は小説や漫画、専門書などカオスな状態で面白かった。

Bの家では、大体漫画読むか一緒に勉強してた。

Bの頭の良さに、ここでも助けられた。

「車を買ったから」とドライブにも連れて行ってくれた。

初めてBの家を見たときは、なぜか懐かしさというかデジャヴみたいなのを感じた。

Bの家の近所もドライブした場所さえ、(前に来たことある!)って感覚に襲われた。

あれが何だったのか今でもわからない。

あの感覚はその頃以降、未だにない。

普通のデジャヴならたまにあるけど。


こんな感じでBと楽しい友達付き合いをしてる中でも、私はやっぱり“次の彼女”を求めてた。

イベントには顔を出したし、掲示板もよく見ていた。

自分の性欲の捌け口が女の子にしかなかったせいもある。

出会い系がヤバいのも、このときになってよくわかった。

色々あった。

書くと長いので割愛しますが。


そんなことしてるうちに、一人すごく気の合いそうな人を見つけた。

相手はタチかネコかもわからない。

ビアン業界に疎くて、「ただ女の子が好き」って人だった。

年下だった。

この子をDとします。


Dは清楚系で、一見地味だけど、よく見たらかなりの美人だった。

業界では、髪染めてそれなりの格好してりゃイケてる、みたいな風潮だったから新鮮だった。

Dとはメールしたり、たまに遊びに出たりと仲良くなった。


そんな中、Dから聞いた言葉がショックだった。

Dは既婚者だった。

びっくりした。

さすがにこれは浮気になるんじゃない?とか、こんな若くて既婚者?とか色々。


Dは、「女が相手なら浮気にはならないし、旦那は私にゾッコンだから」みたいなことを言ってた。


私はDを好きになってたけど、ちょっと重かった。

婚姻関係がどんなものか実際に結婚したことないから知らなかったし、Dの価値観も理解しがたかった。


ただ、Dは悪い子ではなかった。

ある意味すごく純粋なところがあって、突き放せなかった。

この辺りで、私も頭が変に逸れてたと思う。

Dのことは、この時点でかなり好きになってた。

離れるのが惜しかった。

趣味や話も合ったし、Dの雰囲気も心地よかった。

旦那さんもこれにやられたんだろなぁって、見ず知らずのD旦那にまで思いを馳せた。


Bには、「好きになりそうな子がいる」って伝えた。

Bは笑ってたけど、怖かった。

何か知らない怖いものを感じた。

その後もBは変わらず仲良くしてくれた。


ちょっと辛いので、はしょります。


Dは癌にかかってた。

私にそれを告げて、私はまた引いてしまった。

どうしていいか判らなかった。

余命もいくばくしかないらしかった。

最期は旦那さんと一緒にいるべきだと思い、私はDと距離を置くことにした。

ここで退くべきじゃなかったのか?とかは今でも悩む。


結局、Dとはそれから会わなくなった。

Dは、「旦那さんのことも好きだけど女性に目が行く」と話してた。

それなら結婚した旦那が最強なんじゃないかという、敗北感というか虚しさもあった。

結局、私は逃げた。

その後、Dがどうしたかは全くわかりません。

旦那さんの愛情のもとで全快してる姿を思うばかり。


ここまできて、私は自分が大嫌いになっていた。

自分が最低だと思えることを、ことごとくしてきた。

恋愛とかのいざこざは、もういいやと思ってた。

とりあえず目指す方面の試験に意識を向けて逃げた。


Bとはよく会うから試験関係の話を主によく喋ってたと思う。

Bはいつでも私の話を聞いてくれた。

たぶん疲れてるときにも聞いてくれたとのだと思う。

私もBの辛い話も出来る限り聞いてた。

でもBは恋愛関係の話は滅多にしなかった。

数回だけ、元カノの話を聞いたくらい。

その元カノは、話で聞く限りでは私より数段優れてるのに、「なんで私を好きだとか言ったの?」って笑って聞いた覚えがある。

Bはいい友達で、この頃かなり救われた。


こんなことしてるうちに数年経っていて、将来のことを考える時期にきてた。

てか、もう遅いかも?とか焦るのもあった。

とりあえず試験に集中した。

Bとは同じ方面だったから、この頃はよくBといたと思う。

試験の話やら漫画の話とか色んな話題で盛り上がった。

普通に楽しかった。


まともな恋愛をしてなかったような気がする私は、(Bを好きになれたらいいのに・・・)とか思うようになってた。

それでも、どうしてもBのことは性的な対象には見れなかった。

Bはたぶん普通にモテてたと思う。

凄くいい人だし、頭もよくて優しいし・・・。

でも、この関係だから楽しいし上手くいくんだろうなとか思ってた。

Bに次に好きな人が出来たら応援したいとも思ってた。


Bと共通の試験を受けた。

その頃はお互い試験でピリピリしてたけど、同じ目標を持つ者同士で励まし合ったり息抜きで遊んだり・・・。

その頃の頭の中はBと勉強と将来のことだけだった。

そうやって、将来の不安とか今の楽しさとか色々思いながら日々を過ごしてた。

たまに朝、目覚めた時に(何もかも手遅れ)みたいなものがこみ上げて、訳もなく朝から泣いてるときもあった。


ある日の夜中、知らない電話番号から何度も電話がきてた。

私はあまり手元に携帯を持たなかったから、後でこれに気づいた。

留守電も入ってなかったから、間違い電話かな?くらいにしか思わなかった。

翌日、たまたま大学に行ったらBとの共通の友人につかまった。


「Bが交通事故にあった」

Bはその時、もう亡くなってました。

後で知るのだけど、昨夜の電話はBの実家の電話番号でBのお母さんからでした。

Bは飲酒運転の車にはねられて、ほぼ即死状態だったらしいです。


Bは常々、飲酒運転は最低だと言ってた。

そんなニュースが流れたら本気で怒ってた。

そんなBが、飲酒の車にはねられて死んだ。

お通夜とお葬式は泣かないようにしてた。

もしかしたらBには付き合ってる彼女がいたかもしれないとか、絶対私が泣くべきじゃないとか、対外的なことをひたすら考えた。


最後にお棺の中のBを見た。

生きてるときと同じ顔だった。

私は息が出来なくなった。

係の人が「お花を上げて下さい」と花を手渡そうとしてたけど、受け取れなかった。

Bの棺にお花を入れてあげれなかった。

壁際に逃げて、泣くのを我慢してBの棺を凝視するだけだった。

Bは白いお骨になった。

いくつかお骨を拾いあげた。

もう何も考えてなかった。

たぶん無表情だったと思う。


しばらくして試験の合格発表がきた。

Bも私も受かってた。

Bに知らせたいのに、「受かったねー、おめでとう!」って一緒に祝いたいのに、どうすることも出来ない。


その後、最後に一度だけBの家を訪れたとき、Bの本棚をいつもみたいに眺めた。

本棚には前にはなかった本が並んでた。

私が以前「この作家面白いよ」と何気に話した作家の本が並んでた。

それだけのことだったのに、私は泣いた。

涙が止まらなかった。

Aに浮気されたときより、Cに誤解されて罵倒されたときより、Dが癌だと知らされたときより、泣いた。


そのあと就職した。

Bが亡くなった後は、一度だけ女の子と付き合った。

働き出して半年位までは女の子と付き合ってた。

当然だけど気持ちは職場の方ばかりだった。

職場に気になる人が一人いて、その女の子には「好きな人がいる」と言って別れました。

その子も浮気してた。

mixiの日記に書いてたのを見てびっくりしたけど。

そのお陰か別れに罪悪感もなかった。


一年ほどは仕事で精一杯だったけど、気になる人に告白した。

初めて自分から、「付き合って下さい」って告白した。

相手は男性です。

二年くらい付き合って結婚することになった。

数少ない恋愛の中で一番好きになった人。

これから一番大事にする、大切な人です。
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