0017
十年間続いていた彼女との関係が、ついに妻の知るところとなった。


それは北京から帰った夜だった。


それから苦悩の日が続いた。

それは日記に綴られていた。

十月二十日(日)
中国で一週間の用務を終えて、北京空港十四時十六分に離陸した全日空機は大阪空港に十八時八分に着陸。

新幹線に乗り継いで二十一時五十一分にH駅に着いた。


H駅には妻が車で迎えに来てくれていた。


その妻が帰る車の中で、「・・・話そうか・・・どうしようか・・・」と、口篭って言った。


「なんだい・・・。

話してごらん・・・」と云うと、妻は話しにくい様子だったが、おもむろに「あなたが出掛けて三日目の夜、おかしな電話があったのよ・・・」と云った。


「どんな電話だったの・・・」と聞くと、妻は「あなたが、浮気をしている・・・、という電話だった」と云う。


「うそ・・・、そんなことはない・・・。

誰かの中傷だろう・・・」
「貴方に限って、そんなことはないと思うけど、でも、気になるの・・・」

「どんな内容の電話だったの・・・」
「貴方が仕事が終わってからバスターミナルで待ち合わせしているとか、本屋で立ち読みして待ち合わせしているとか、たびたび喫茶店や居酒屋で飲んでいるとか、駅裏路地のホテルに入って行くのを見たとか、相手とはかなり親しい間柄に見えたとか、どうも職場の女性のようだったとか・・・、などと云われた。

それ、本当・・・?」

電話の内容には、確かに心当たりのことが多かった。

ついに浮気がばれたと思った。
妻からの話を聞いて、「それは職場が一緒だから、一緒にお茶を飲んだり、居酒屋で飲むことはあった。

しかし、人が噂するような、関係を結んだことはないよ・・・。

君を裏切るようなことは、決してしていない・・・。

それは信じて欲しい・・・。

私を陥れる誰かの中傷なんだ・・・!・・・」と強く否定すると、妻は「あなたに限ってそんなことないでしょう・・・。

信じていいのね・・・!」と云い、運転する私の横顔を見つめていた。


「そうだよ、君を裏切るようなことはしていないよ・・・」と云って運転を続けたが、心中穏やかではなかった。


とうとう来るべきものが来たか・・・と、頭から血が下がる思いがしたが、努めて平静を保ち運転を続けた。


十月二十一日(月)深夜0:30
帰宅し手荷物を整理していると日付が替わった。

床に着いたのは十二時を回っていた。

一週間ぶりに抱く妻の柔肌だった。

妻の乳房に触れながら愛撫していると妻は「・・・信じていいのね・・・」と云って私に抱きついてきた。

妻は、不審電話にことを話し、その電話の内容が否定されると、不安と胸のつかえが取れ、安心したのか、私に快く体を預けてきた。

次第に体をくねらせ、素直に快感を表し、男塊を強く絞り込んできた。

私は、溜まっていた白濁を妻の体内に注ぎ込んで果てた。

妻も果て、私の胸に抱かれてそのまま眠りに吸い込まれていった。


十月二十一日(月)22:00
一週間ぶりに職場に行った。

顔を上げれば彼女が机に向かって真面目に仕事をしている姿が目に映る。

彼女は同じ職場にいる職員で、初めて彼女を女にしたときは彼女が二十八歳の時だった。

あれから十年、すでに三十八歳となっていたが、まだ結婚していなかった。

妻にばれた今、どうすればいいのだろうか、思い悩んだ。

家庭を捨てる勇気もない。

今の地位名誉も守りたい。

彼女との愛を思うと、今ここで彼女を裏切って捨てることも偲び得ない。

かといって、彼女と同じ職場なので、職場に公になれば犯した過ちから、坂道を滑り転がり落ちることは必至。

それは食い止めねばならない。

滑り落ちるのを食い止めるには、彼女と手を切って浮気という高い代償を背負うこととなるが、それの他に方法はない・・・と思った。

今日一日中、仕事が手に付かなかった。


十月二十二日(火)
自分が犯した責めに苦しんだ。

深刻な難題に悩まされて仕事も手につかなかった。

何で、同じ職場の女の子に手を出したのだろうか。

何故、こんな事をしたのだろうか。

彼女が未だ結婚していないのは自分のせいなのだ。

と自分を責めるばかりだった。

また一方、妻が私の浮気に疑念を持つようになったのには、思い当たることがあった。

それは夏の暑い日、病院に友達の見舞いに行った妻がその帰りに、妻の職場の上司と出会って一緒にお茶を飲んだという。

その時、その上司が妻に「あなたの主人が浮気しているという噂が流れているよ・・・注意しなさいよ・・・」と、忠告されたと云ったことがあった。

「主人に限って・・・」と云う、夫の対する信頼感がこの忠告を無視していたようだった。


十月二十三日(水)
もう一つ妻が疑いを持ったことに思い当たることがあった。

それは中国に出張する少し前、彼女が私に難題を投げかけてきた。

彼女は私に「これまでの私の人生は何だったのでしょう・・・。

私は貴方の何だったのですか・・・。

貴方はこれからの私をどうしようと考えているのですか・・・。

奥さんと私のどちらを取るのですか・・・。

それをはっきりさせて欲しいの・・・。

ここらで、けじめを付けるのも一つの考えです・・・。

貴方が奥さんと別れて私を取るのか、それとも、それ相当の償いをして決別するのか・・・、貴方の考えを聞かせて欲しい・・・」と迫ってきた。

このことは彼女も誰かに相談した結果の要求だと思った。

また彼女も私と別れる時期を模索していたのだろう・・・とも思った。

それを告げられた私は、手痛い衝撃を受けた。

私は思い余ってその夜、妻に向かって「クラブの女性につきまとわれている。

けじめを付けなければならないが、それには金がかかる・・・」と暗に金が必要なことを仄めかした。

このことが妻に決定的な疑いを持たせるようになったのは当然のことであると思った。


十月二十四日(木)
今日も彼女が真面目に机に向かって仕事をしている姿が瞼に焼き付く。

どうすればいいのだ。

“身から出た錆”とは、このことなのだ。

誰にも相談できない事で一人思い悩んだ。

この処理を誤れば、家庭を失い、職場を失い、これまで築き上げた地位も名誉も失い、世間の荒波にさらされて、世間のどん底に落ち込んでいく。

危険な岐路に、今、立たされていると思った。

何とか円満に解決せねばならない。

それには、すべて彼女の言い分を呑み込むしかない・・・と思った。

そうする傍ら、妻とは円満に家庭生活を守っていくことだった。

それには、妻への愛情を示すことだと思った。


十月二十五日(金)
私は、彼女と妻の両方に、手痛い難題と代償を背負わされた。

快楽の裏には厳しい恐怖と苦難と大きな落とし穴が待っていたのだ。

私は、悩み悩んだあげく、高い償いだが、彼女の要求のすべてを呑み込むしかないと思った。

妻に対しては、心からの愛情を示すことだという結論だった。

それは、浮気した男のずるい卑怯な考えだとはわかっていた。

こんな嫌な思いから一日も早く脱却し、新しく出発をしたいという気持ちで一杯だった。

妻も同じだったと思う。

その夜、床に横たわった妻が、「明日の土曜日、午後から紅葉を見に行かない・・・。

一泊して温泉に浸かり気分を新しくしたいの・・・」と言い出した。

私としても、一日も早い解決を願って忘却を誓いたい願いから、それに快く応じた。


十月二十六日(土)
深夜一時三十分・・・。

深夜に私はふと目が覚めた。

まだ一時半だった。

私は、横で軽い寝息をかいて眠る妻を見つめ、妻に背信行為したことを反省し、過ぎし思いを断ち切り、妻のみを愛していることを態度で示そうと思った。

妻を抱きよせた。

妻は、寝込みにも関わらず、私の誘いを拒まず、抵抗することもなく、からだの全てを素直に委ね、拡げてくれた。

私は妻の温もりのある壷の中に入り、女の温もりに包まれた。

その日の午後・・・。

山間の静かな温泉に車を走らせた。

途中、リンゴ園に立ち寄り、リンゴ狩りの時を過ごした。

リンゴの木の下で微笑み、リンゴを採っている妻の姿が愛おしく思えた。

やがて紅葉した山間のホテルに着いた。

深まった秋ともあって、部屋にはすでに炬燵が出されていた。

丹前姿でくつろぎ、豪華に調理された料理を味わった。

その夜・・・。

食事が終わると仲居さんが布団を敷いてくれた。

再び温泉に浸かってから、敷かれた布団の上に躰を横たえた。

妻も布団に横たわった。

妻も私に抱かれて甘えようとする意図が心に潜んでいたように思えた。

暗闇の中で妻の浴衣の裾を拡げ、弾ける妻の肌に愛撫を続ける。

妻は抵抗もなく私の愛を受け入れた。

妻は私の愛撫を受けながら云った。


「あんな噂が拡がると云うことは、わたしにも悪いところがあったなのね・・・」

妻がしおらしいことを云ってくれた。

それ以上、中傷電話のことは一切話さなかったし、妻も聞こうともしなかった。

妻は、私からの愛撫を受けて女としての悦びに達し、私とともに果てた。


十月二十七日(日)
紅葉を眺め・・・。

気持ちの良い朝を迎えた。

朝食を終えて紅葉を探勝するため乗船場に向かった。

駐車場に佇む妻の姿、着こなした白いセーターに黒いスラックス姿がよく似合っていた。

秋深まった湖と、その周囲の山々の紅葉を観光船で眺める。

その紅葉を眺める妻の顔に、昨夜の夫婦和合に愉悦したの女の悦びが滲み出ていた。

二人は、暗黙のうちに、互いの出発を胸に秘めて帰途についた。

助手席の妻の横顔が悦びに満ち幸せそうな顔に見えた。

浮気は浮気、愛しているのは妻だけだという思いを改めて私は痛感していた。

帰宅したその夜・・・。

横たわる妻の浴衣の紐を緩めて裾を拡げ、再び妻の温かい肉襞に包まれた。

妻も両手を私の背に回して抱きつき、私の動きに合わせて腰を揺さぶり、凄い圧壁で私の硬い肉棒を包み込み、絞り込んでくれた。

妻がこんなに何回も私の欲求に応え、しかも激しく乱れたのも珍しいことであった。


十月二十八日(月)
昼休みの時間、彼女を昼食に誘った。

彼女が言った償いは予想以上に高い額だった。

彼女がそこまで計算するはずがない。

それは誰かの入れ知恵だと思った。

確かに一回当たりの償う額と、これまで繋いだ回数を乗ずればそんな額にもなる。

積み重ねられた額の大きさにまたもビックリした。

私は話を聞いて、「償いはする・・・今後も他人行儀はしないが仕事とは混同しない・・・。

これまで通り今後も職場の友達としてつき合う」ことを約束して別れた。


十月二十九日(火)
一方で、私は誰が中傷電話したのか、詮索もしてみた。

妻に好意を寄せる男性か、私を陥れようとする者の仕業か、或いは妻が調査を依頼したのか・・・。

絞り込んでいくと何人か思い当たる男性が浮かんできた。

しかしながら、そんなことを詮索してみても、結局は、公にするわけにはいかない問題だ。

何とか穏便に済ませなければならない・・・と思いながらも苦しんだ。


十月三十日(水)
高い代償をどう工面するかも難題だった。

妻に黙って生命保険を解約し、会社の一般貸し付けを借りる事にした。

何とか見通しが付いた様な気がした。


十一月一日(金)
目が覚めた時は、もう明るくなっていた。

横にいる妻は、昨夜のセックスに満足してかよく眠っていた。

肩や腕が掛布団からはみ出して、私に背を向けて静かな寝息をたてている。

私は向きを変え、妻の豊満なヒップに下半身をすり寄せた。

また精力が回復し性欲が漲って勃起してきた。

それが妻の豊満なヒップに押しつけられている。

妻の薄い布の上に手を滑らせ、少しずつ力を加え揉みあげていくと妻の身体が反応してきた。

妻は徐々に両足を拡げ、私の愛撫を受け入れやすい姿勢に変えてくれた。

そして昂ぶるにつれ、更に大胆に脚を開いた姿勢となってくれた。

昨夜に続いて、妻が今朝も受け入れてくれた。

私は妻を愛し続けた。

和やかなセックスに明けていく朝だった。


十一月三日(日)
久しぶりにのんびりと過ごした文化の日だった。

あの一泊旅行以来、妻の気持ちも和らいで、お互いに和やかな日を送っていた。

その夜も、一昨日に続いて再び妻の肌を求めた。

優しく続ける愛撫に、漸くその気になった妻が、最も感じる女の蕾を恥骨と硬い肉棒で刺激していくと、顔を横に背け唇を半開きにして快感を噛みしめ、次第に昂ぶっていく顔の表情が愛おしかった。

やがて妻は両脚を大きく拡げて、積極的に腰を動かし、私に跨って騎乗位となってくれた。

妻の歪んでいく顔の表情を下から眺めながら、これでもかと激しく突き上げて、ついに果てていく。


十一月九日(土)
一週間ぶりに妻のからだに繋いだ。

僅か三週間の間に、新婚当時の様に数多く妻と繋いだ。

他人の中傷による不愉快な電話が、マンネリ化していた夫婦の絆をより固いものに結びつけていく結果となった。

妻もこんなに何回も夫の欲求に応え、しかも激しく乱れたのも珍しいことだった。

彼女との関係は、所詮、浮気だった。

彼女から卑怯者と呼ばれ苦しんだが、心から彼女を愛しているというよりは、妻にない彼女の体が欲しかったのと、職場から白い眼で見られ放り出されるのが怖く、断ち切れずに今日までずるずると関係が続いていたのだった。

本心から愛するのは妻だけだと思った。

これを機会に浮気は止めようと心に決めていた。


五月三日(土)
半年後それから半年過ぎた五月の連休、祝日の夜だった。


「・・・まだ続いているの・・・」と妻が問うてきた。


私は「・・・えぇ・・・!また、変な電話がかかってきたの・・・」と問い返したが、妻は黙って返事もしなかった。

その頃、私はすでに彼女との関係はなかったので、自信を持って妻に「もうそんなことはないよ・・・」と云うと、妻は安心して私に身を寄せてきた。


そして妻は云った。


「あの不愉快な電話を受けたとき私は、大変なショックだった・・・。

あなたの出張中、眠れない夜が続いてストレスが最大のピークに達していたの・・・。

あなたが帰ってきたら、話そうか、どうしようかと迷っていた・・・。

噂だけであって欲しい・・・と願っていたの・・・。

彼女が、あなたと同じ職場の女性だから、誤解を招くような事があったこともわかるわ・・・。

わたしだって勤めていると、男性から甘い言葉をかけられてくることがあったから・・・。

例え交際していたとしても、男女の関係はないものと信じたかったの・・・。

また、そうあって欲しいと願っていたの・・・。

また、貴方が若い女に目が向いていたのは、私にも責任があるとも思って反省もしたの・・・。

セックスを要求する貴方を、わたしが、疲れいることを理由にて拒むことが多かったから・・・。

だから、わたしも反省し、あれ以降わたしは、貴方の欲求は拒まぬようにしたの・・・。

、もしあの時、私が勤めていなかったら、私は離婚を言い出すところだったの・・・。

今でも貴方と彼女との間には男女の関係はなかったとものと信じているの・・・」と云った。


その声は涙ぐんでいた。


私は妻の温かい肉襞に男塊を貫き通し、ゆっくり律動を繰り返し、妻の歪む顔の表情を真上から見つめながら、白濁のすべてを妻の躰の奥に噴射して果てた。


それ以来、妻が彼女のことを口にすることはなかった。