kimamamh082600345


「あのさ・・・お前に相談があるんだけど・・・」

職場の同期で、悪友とも言える早野からの電話を受けた。

「どうしたんだ?金ならねぇぞ。」

「ばかっ!金なんかじゃねぇよ。木下(俺)じゃなきゃ、相談出来ねぇんだ・・・」

「あー・・・分かったよ。じゃ18時に・・・」

俺は時間と場所を設定して、電話を切った。



俺は本社の経理部で課長をしている40歳。

早野は営業所の所長で、俺と同じ40歳。

俺は結婚経験がなく、早野は×1。

早野の営業所と本社は近く、時々飲みに行ったりはしてたが、そんなに切羽詰った感じで相談なんて、早野らしくないな・・・

一抹の不安を覚えながらも、俺は待ち合わせの場所に向った。



「なんだよ、相談って?」

待ち合わせ場所のすぐ側にあった、今まで行ったことの無い居酒屋の個室で、俺と早野は向き合ってた。




「うん・・・あのな。俺・・・結婚するんだ。」

「なにっ!俺が一度も結婚出来ないのに、お前は2度も?相手はどこのどいつだ?」

「いや・・・あの・・・サンシャインのアケミちゃん・・・」

「は?あのパブの?マジ?」

「うん・・・子供出来ちゃって・・・」

「アケミちゃんって、確か22歳じゃねぇか?18歳下だぞ。お前、そりゃ犯罪だぞ!」

「いや・・・あの・・・でもさ、出来ちゃったモンは仕方ねぇだろ?」

「ってかお前、いつ口説いたんだ?いつの間にだ?」

俺は声を荒げて尋ねた。

「いや・・・あの・・・口説いたって言うか・・・なんか流れで・・・」

「ふ~ん・・・それで?22歳の奥さんに、14歳の娘?そしてすぐにまた子供が出来て?」

実は早野には、前妻との間に14歳になる娘がいて、男手一つで育てている。と言えば聞こえはいいが。

若葉ちゃんって言う娘は、「ホントに早野の娘か?」って位、しっかりとしたよく出来た子で。

小学生の間は、流石に早野の母親が面倒見てたが、中学に上がると、何でも自分でやるようになった。

グレたりもせず、学校の成績もいいと聞く。

今時珍しい、本当に出来た子だ。

「実は、相談ってその事なんだ・・・」

早野は重い口を開いた。



「バカじゃねぇか!お前は!」

俺は早野を怒鳴りつけ、グラスのビールを早野にぶちまけた。

早野は俯きながら、「でも・・・本気なんだ・・・」と呟いた。

早野が言った事を要約すると・・・

アケミとは結婚したい。

本気で愛してる。

アケミもまた・・・

ただアケミは、若葉ちゃんの存在を気にしている。

若葉ちゃんの母親には、なれる気がしないと。

だから、若葉ちゃんがいるなら、結婚はしないと。

「そんな女、やめちまえ!」

俺は怒鳴った。

が、早野は、「アケミと腹の子はどうなるよ?」と聞いてくる。

「んなもん・・・勝手にするだろうよ!」

「アケミはさ・・・俺がいないとダメなんだ。それに俺も・・・」

「じゃ何か?お前、若葉ちゃんをどうすんの?殺す?養女にでも出すんか?」

俺は呆れて尋ねた。

「殺せはしないけど・・・養女に・・・」

そして俺は、ビールをぶちまける事になった。



その後早野とは、喧々諤々となった。

早野のだらしなさに、俺は情けなく、そしてかなり苛立っていた。

「分かったよ、このバカ!お前は若い女と好き勝手したらいいさ。若葉ちゃんは、俺が面倒見るよ!」

「ホントか?」

早野の嬉しそうな顔を見て、俺は「しまった・・・」と思った。

「お前ならさ、安心して若葉を任せられる。良かった・・・ありがとう木下。頼んだからな。」

「いや・・・早野、ちょっと待て・・・今のは・・・」

「口が滑ったのか?取り消すのか?武士に二言か?」

「いや・・・だから・・・あの・・・」

一気に形勢逆転。

「お前から断られたらさ・・・若葉ってどうなるんだろ?どっかのエロじじいに囲われてさ・・・悲しい末路かな・・・」

って、誰のせいやねん!

「だから・・・その・・・早野さ~」

「頼む、木下!この通りだ!若葉もお前の事は慕ってる。これで皆が丸く収まるんだ。だから・・・頼む!」

拍子抜けしたって言うか・・・

俺は早野に、返す言葉がなかった。



早野の行動は早かった。

その週の土曜日には、と言っても夕方になって、若葉ちゃんをウチに連れてきた。

「ほらっ、若葉。お前の新しいお父さんだ。ちゃんと挨拶して。」

「若葉です。お久しぶりです。いつも父がお世話になってます。あの・・・よろしくお願いします。」

って、若葉ちゃんも可哀想だ・・・

「えっと、木下。ちゃんとした父娘になるんだったら、養子縁組したがいいな。若葉は14歳だから、俺が代理人になってやるから。」

「あのな~早野・・・」

「えっと・・・ちゃんと家裁に行ってから・・・それから・・・家裁には、来週の・・・そうだな。水曜日はどうだ?」

「いや・・・だから・・・」

「水曜日だぞ!分かったか?じゃ、俺、色々と忙しくてな。式の事もあるし・・・じゃ、若葉をよろしくな。」

そう言うと、さっさと帰ってしまった。

取り残された、俺と若葉ちゃん。

「ふーーーーっ」思わず大きなため息をつく。

「あの・・・」

若葉ちゃんが口を開いた。

「あたし・・・迷惑ですよね・・・あの・・・帰りますから・・・」

「帰るって?どこに?」

「いや・・・あの・・・友達のウチとか・・・お婆ちゃんの家でも・・・」

「友達のウチに、いつまでいるの?お婆ちゃん?入院してるでしょ?」

早野の母親は認知症を発症し、今施設に入ってる事は、早野から聞いて知っている。

「でも・・・木下さん、迷惑でしょ?」

「いや・・・早野には腹立ててるけど、若葉ちゃんには罪はないから・・・」

「そうですよね・・・父には、怒って当然ですよね・・・」

「ああ」

俺は相槌を打った後、再度ため息をついた。

若葉ちゃんも同時に、大きな大きなため息をついた。

それが何だかおかしくて、二人で笑い合った後、またため息をついた。



俺は独り身だから、大きな部屋には住んでない。

2DKの安アパートを借りている。

早野がこの日に来るのは知ってたが、気乗りしなかった為、部屋は何も片付けてない。

つまり、若葉ちゃんの部屋がない。

それを言うと、「大丈夫です。あたし、気にしませんから。」って言うが、俺は気にするってば。

娘(まだ娘ではない)とは言え、年頃の娘と、同じ部屋には寝る事は出来ないだろ。

そう思い、奥の間を片付けようと思ったが・・・

パソコンはあるし、体を鍛える為のトレーニングマシンもある。

釣り竿もあるし、ゴルフバッグに野球道具も・・・

おまけに掃除をさぼってるせいで、埃まみれ・・・(汗)

「いいですよ、私・・・こっちで寝ますから」

若葉ちゃんは早々と荷物を置き、「この辺」と指さした。

ん?ちょっと待て・・・若葉ちゃん、布団は?

「へ?」って顔の若葉ちゃん。

「持って来てないですよ・・・持てる訳ないし・・・」

だよね・・・

俺、今夜布団なしだな。

でも、とりあえずは今夜を乗り切らないとな・・・

俺はそう思い直し、若葉ちゃんを夕食に誘った。

歓迎会と称して。



「木下さ・・・いや、お父さんですね。」

「別に、どっちでもいいよ。」

「いや、お父さんです!えっと・・・お父さん?お父さんはどうして結婚してないんです?」

「そりゃ・・・もてないから・・・」

「ウソですよ!あたしのお父さん・・・いえ・・・前のお父さんよりも、絶対・・・」

俺だってこの年齢だ。

結婚を考えた女が、今までいなかった訳ないじゃん。

でも、中学生の若葉ちゃんに、そんな話しをマジになってしたってね・・・

「ありがと」

そう答えて、その話しを俺は締めた。

その夜は、外食と言ってもファミレスで。

俺、ファミレスなんか殆ど行った事がない。

もしも結婚してて、若葉ちゃんみたいな娘がいたら、もっと行ってるんだろうな・・・

でも結婚する前に、娘が先に出来てしまったよ。

そう思うと、不思議と笑えてきた。



夕食後、家に帰って風呂を沸かす。

若葉ちゃんに勧めると、「スミマセン・・・」と先に入る。

やがて上がった若葉ちゃんが、台所で着替えるのだが・・・

台所と部屋の間の戸は閉まってる。

だが、戸はすりガラスになっており、裸体の陰が・・・

生で見るより想像力が増し、余計に興奮してしまう。

見ないように、見ないようにと心がけるが、気にすると余計に。

「お父さん、どうぞ・・・」と若葉ちゃんが入って来たが、恥ずかしくて顔を見れない。

参ったな・・・

風呂に入ると、軽く勃起していた(汗)



若葉ちゃんに布団を与え、俺はコタツで寝る事にした。

だが夜中に、寒くてくしゃみが出る。

すると若葉ちゃんが起きてきて、俺に布団をかける。

いい子だ・・・

「ありがと・・・でも、若葉ちゃん、寒いだろ?」

「いえ・・・」

「眠れない?」

「はい・・・枕が変わると・・・」

「だよね。」

「あたしも、ここで寝ていいですか?」

「えっ?」

「ダメです?」

だが若葉ちゃんは、俺が返事をする前に、俺の横に潜り込んできた。

「あったか~い・・・」

若葉ちゃんは、俺に身を寄せてきた。

俺・・・恥ずかしながら・・・鼓動が高鳴っていた。

だが若葉ちゃんが、「ふぇっ・・・ふぇっ・・・」と、突然すすり泣き出した。

無理もない・・・

父親から、捨てられた子だから。

俺は思わず、若葉ちゃんの細い肩を抱き寄せた。

若葉ちゃんは俺の胸に顔を埋め、尚も泣き続けた。

なき疲れたか、程なく若葉ちゃんは寝息をたてはじめた。

だが俺は、一睡も出来ぬまま朝を迎えた。

「明日、やっぱ早野に話して・・・若葉ちゃんはやっぱり引き取れない。」

俺はそう決めていた。



空が白み始めたのは気付いてたが、いつの間にか俺も寝ていた。

気付いた時、若葉ちゃんはまだ寝ていた。

俺の腕を枕にし、俺の胸に顔を埋めたまま・・・

足を俺に絡み付け、まるで恋人のそれのように。

時計を見ると、10時を少し回っていた。

俺が起きたのに気付いたか、若葉ちゃんも目を覚ました。

顔は俺の胸の中のまま、顔だけを上げて、「おはようございます」と言った。

俺が「おはよう」と返すと、「今・・・何時ですか?」と尋ねてきた。

「10時を・・・少し回ってるね。」

「えっ?」

若葉ちゃんが顔を上げる。

「た、大変・・・ご飯、すぐ作りますね。」

体を起こそうとするが、狭いコタツに入ってる為、なかなか起き上がれない。

「いいよ!いい・・・俺、朝飯食わない人だから。それに・・・慣れぬ環境で、あまり寝れてないでしょ?ゆっくりしてていいよ。」

「そ・・・そうですか?」

若葉ちゃんはそう言うと、また俺の腕を枕にし、足も絡めてきた。

おいおい・・・

「あの・・・お父さんともですね・・・一緒に寝た事なくて・・・」

「お父さん、あたしの事放ったらかしで・・・」

「14歳で、何だか・・・子供みたいですよね?でも・・・ホント言うと・・・」

「だから昨夜、ちょっとドキドキしたけど、ちょっと甘えてみようかなって・・・」

「お父さんとは、なんだかうまくやっていけそうです。甘えん坊の娘ですけど、よろしくお願いします。」

俺は言葉がなかった。

だが若葉ちゃんは、尚も俺にぎゅっと抱きつくと、こう続けた。

「もうあたしを捨てないで・・・お母さんも、お父さんも・・・だからもう、あたしを捨てないで・・・」

そう言うと、また泣き出した。

俺は昨夜の決意をきっぱり忘れる事にした。



昼頃に起き出して、とりあえず奥の間を片付ける事にした。

「ここは若葉ちゃんの部屋にするから・・・そうだな。箪笥と机を揃えなきゃね。」

「机ですか?」

「うん・・・学生は、きちんと勉強しなきゃ。」

「コタツでもいいですけど・・・」

「だめだめ!机じゃなきゃ、身が入らない!」

「は~い」

「それから・・・ベッドもいるな。パイプベッドじゃ・・・ダメ?」

「ベッドは・・・要りません!」

「ん?布団を上げ下ろしするの?」

「いえ、そうじゃなくて・・・お父さんと、一緒に寝ちゃダメですか?」

「はぁ?」

「ダメ・・・ですか?」

俺はどうも、若葉ちゃんの上目遣いに弱いようだ。

片付けが済んで、箪笥と机を買いに行った。

かなりの出費だったが、可愛い娘の為だ、仕方が無い。

それから・・・

やはりベッドを買う事にした。

パイプベッドではなく、ちゃんとしたセミダブルを。

それに合わせ、布団も購入。

やっぱ毎晩一緒に寝るわけにはね・・・

「たまにならいいから」と言うと、若葉ちゃんは不服そうだったが、「は~い・・・」と頷いた。

本当に、可愛い子だと思う。



養子縁組が済むまで、若葉ちゃんを前の中学まで送るのが日課となった。

新学期までは、前の中学に通わせようと思ったから。

「縁組は春休みまで待ってやれ」と、早野を説得した。

突然転校とか、突然名前が変わるとかは、いくら何でも可哀想だ。

若葉ちゃんの日課は、「いいよ」と言うのに、炊事洗濯をきちんとこなした。

どんなに遅く帰っても、いつも起きて待っていた。(勉強しながらね)

いい奥さんになると思う。

そして春休み・・・

晴れて若葉ちゃんは、「木下若葉」となった。

転校の手続きも無事に済んだ。

若葉ちゃんは、本当に成績優秀だった。

公立ならば、この辺の高校はどこでも受かるって感じ。

だが当の若葉ちゃん、俺に気遣って、中学卒業したら働くつもりだったらしい。

「娘がね・・・親に気を使うもんじゃない!娘なんだから甘えなさい!」

そう言うと、若葉ちゃんは目にいっぱい涙を溜め、「ありがとう」と抱きついてきた。

正直ね・・・いい父娘関係を気付けてると、俺は感じてた。

ちと・・・少しだけね・・・ドキドキするが・・・



GWは休みが取れず、可哀想な思いをさせたが、夏休みは1度だけ、海に連れて行った。

「受験生だから・・・」

最初はそう断ってたが、目は嬉しそうだった。

冬休みは流石に、受験直前って事で・・・

正月に、「生まれてはじめて」と言う振袖を着せてやり、一緒に初詣。

腕を組んで参道を歩く姿は、今時珍しい、仲の良い父娘だった。

そして受験・・・

見事に志望の公立にパスし、4月から女子高生となる娘。

「よし。合格したご褒美に、何か買ってやろう」と言うと・・・

「物はいいから・・・春休みに、お父さんと一緒に旅行に行きたい。」と言った。



TDLとか、TDSとかを俺は言ったが、「温泉がいい」と若葉ちゃん。

熱海の温泉に、2泊3日の二人旅。

3日休むなんてね・・・

かなり職場にはムリを言った(汗)

何はともあれ、行けば勝ち(笑)

携帯の電源はオフにしたままね(爆)

手を繋いだり、腕を組んだりと、ずっとくっついてた二人。

この頃になるとようやくね・・・娘として受け入れてて、ドキドキ感もなくはないがね。

ところが宿で、「一緒にお風呂に入りたい」と言われた時は・・・

「あのね~・・・若葉ちゃんも年頃なんだから・・・それはね・・・」

軽くいなすが、「ダメですか?」と、例の上目遣いにね(汗)

結局貸切風呂に、入る事になったが・・・



臆す事無く、浴衣をスルリと脱いだ若葉ちゃん。

背を向け、ブラもショーツも脱ぎ去って・・・

「じゃ、先に入ってますね」と、早々と浴場へ消えていった。

反面俺は・・・

モタモタと、そしてドキドキしながら・・・

意を決し、タオルで前を隠して浴場へ行けば、若葉ちゃんは、露天の縁の岩に座って、こちらを見ていた。

何も隠さずに・・・

その姿は、絵画の人魚のようだった。

思わず立ち尽くす俺。

「お父さん・・・あたし・・・お父さんのお陰で、無事に中学も卒業出来たし、4月から高校生になります。」

「生んでくれた親よりも、お父さんに感謝しています。本当にありがとうございます。」

「少しだけ、大人に近付きました。来年、そして再来年と、若葉は少しづつ大人になります。あの・・・」

「毎年少しづつ、大人になる若葉をご覧下さい。これからもずっと、若葉をよろしくお願いします。」

そう言うと、自分の体をわざと見せるかのように胸を張り、手を後ろに回した。

俺はまだ、1年とちょっとしか若葉ちゃんと接してないのに、「生んだ親より感謝する」なんて・・・

涙が溢れてきて、止まらなかった。

感涙に咽ぶ俺に若葉ちゃんは近付くと、胸に抱きついてきた。

若葉ちゃんもまた泣いていた。



「お父さん?」

若葉ちゃんから声をかけられ、その顔を見る。

若葉ちゃんは抱きついたまま、例の上目遣い。

ん?こりゃ、何かあるぞ?

「あの・・・お父さん?」

「なに?」

「あの・・・言いにくいんですけど・・・その・・・大きく・・・」

はっとして、若葉ちゃんから逃れ、股間を確認したら・・・

俺とした事がね、こんな感動の場面で、いくら娘のおっぱいが体に当たってるとは言えね(汗)

自分自身に幻滅した。

慌ててお湯に浸かった俺。

若葉ちゃんは笑いを堪えながら、「お父さんったらもうっ・・・可愛いんだからっ」とからかう。

「ご、ごめん・・・」と謝る俺。

「あたしもお父さんに見せちゃったけど、代りに貴重な物を見せてもらいました。」

若葉ちゃんはそう言うとお湯に浸かり、俺にくっつくように身を寄せてきた。

「お父さん・・・大好きっ!」

そう言って、俺の頬にキスをした。

俺は黙って俯いていた。



照れ臭くて、何度も断ったが、若葉ちゃんに背中を流してもらった。

風呂から出る時は、背中も拭いてもらった。

情けない事に、その度にドキドキする俺。

部屋に戻る時も、若葉ちゃんは腕を絡めてきた。

石鹸とシャンプーと温泉の匂いが、かすかに漂ってきた。

旅館の仲居さんからも、「仲がいいんですね~」と羨ましがられる。

若葉ちゃんは、「あたし、お父さん大好きですから」と臆す事無く言う。

俺はただ照れるだけ・・・(汗)



その日の夜、若葉ちゃんと、狭い布団で一緒に寝た。

上目遣いにやられてね(汗)

俺に腕枕され、胸に顔を埋める。

「この格好・・・落ち着くんです・・・」と若葉ちゃん。

俺は落ち着かないけどね。

「お父さん?」

でた!例の上目遣い・・・

「いい子いい子・・・してほしいな・・・」

それ位なら・・・

俺は若葉ちゃんの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「若葉は、本当にいい子だ・・・」と言いながら・・・



若葉ちゃんと、セックスする夢を見た。

俺は細い若葉ちゃんの体を、折れんばかりに抱きしめていた。

若葉ちゃんも、俺に抱きついていた。

そして気付いた時、俺は胸元が肌蹴、殆どショーツ1枚の若葉ちゃんを抱いていた。

俺自身の胸元も肌蹴ていた。

見ると若葉ちゃんは目を開け、俺を見ていた。

「ご、ごめん・・・」

俺は慌てて、若葉ちゃんから離れようとしたが、「まって!」と止められた。

「お父さん?」

「(でたっ!上目遣い!)な、なに?」

「どんな夢見てた?」

「えっ?」

「正直に言って!」

「・・・」

「突然あたしに抱きついてきて、好きだとか、愛してるとか・・・」

「お、俺・・・そんな事言った?」

「もしかしてお父さん・・・好きな女性がいますか?」

「はぁ?」

「あたしがいるから、その女性と一緒になれないとか・・・それならあたし・・・」

「ちょ、ちょっと待って・・・俺が見てた夢は・・・」

「えっ?違うの?じゃ、どんな?」

「いや・・・その・・・」

「何です?教えてよ。」

「いや・・・あのね・・・その・・・」

「もうっ!教えてよ。」

「だから・・・その・・・若葉とね・・・」

「えっ?あたし?何?どんな夢?」

「いや・・・その・・・抱き合う・・・」

キャハハハハと笑う若葉ちゃん。

「お、お父さんったら・・・もうっ・・・よりによって、あたしだなんて・・・キャハハハハ」

「そんなに笑わなくても・・・」

「昨日の温泉が、刺激強すぎた?」

「そうかも・・・女の子の裸見たの、久々だったし・・・」

「お父さん、かわいいっ!」

若葉ちゃんはそう言うと、俺の唇に唇を重ねた。

「あたしのファーストキス・・・お父さんにあげちゃった・・・」

「大好きっ!お父さんっ!」

そう言うと、胸を肌蹴たまま、俺にきつく抱きついてきた。

俺も少しだけ力を入れ、若葉ちゃんを抱きしめた。

「大好きだよ・・・」

若葉ちゃんはそう言うと、また俺にキスをした。

2度目のキスは1度目とは違い、長いキスだった。

俺は自制するのが精一杯だった。



4月になり、若葉ちゃんは高校生となった。

熱海の夜、自制心を失いそうになった俺だが、親子の関係は保ってた。

そんな時、早野から電話を受けた。

若葉を養女として以来、俺と早野の関係は遠ざかっていたのだが・・・

「あのさ・・・お前に相談があるんだけど・・・」

「どうしたんだ?金ならねぇぞ。」

「ばかっ!金なんかじゃねぇよ。木下に、大事な話しがあるんだ・・・」

「あー・・・分かったよ。じゃ18時に・・・」

俺は時間と場所を設定して、電話を切った。



某居酒屋の個室にて、早野と向き合って座る。

「あのさ、俺・・・アケミと別れたんだ。」

「ふ~ん・・・そっか・・・」

「娘もな・・・アケミが連れて行っちゃって・・・今俺、一人なんだ・・・」

「ふ~ん・・・それで?」

「今、すっごく寂しくてな・・・そしたらな・・・若葉の顔がちらついてな・・・」

「勝手なもんだ。若葉ちゃんをすてといてさ。」

「それでだ!お前に勝手は承知で頼みがあるんだが・・・若葉を返してくれねぇか?」

「馬鹿野郎っ!」

俺はグラスのビールを早野にぶちまけてた。そう、あの時のように。

「怒るお前の気持ちはよく分かる。若葉といた頃、俺は全然父親じゃなかった。でもさ・・・心入れ替えて父親するから・・・頼む!この通り!」

「ふざんけなっ!」

俺は席を立ち、早野を残して店を出た。



しかしその後、早野はしつこかった。

何度も何度も電話をしてきた。

そして・・・

とうとう早野はウチに来た。

若葉と俺が、くつろいでる時に。

「勝手な・・・」

若葉は震えながら、早野を睨みつけていた。

「あなたが・・・あたしにした事・・・理解してますか?」

「だから・・・ゴメン・・・申し訳なかった・・・」

「それだけじゃないっ!」

若葉が怒鳴った声、俺は初めて聞いた。

「あたし、ずっと寂しくて・・・それで、あなたに認められたいと、あなたが望むことは何でも・・・」

「あなた、あたしに何をさせました?その汚いもん舐めさせたり、体触ったり・・・」

えっ?

「あたし、そんな事までしたのに、好きな人が出来たら、さっさと捨てられて・・・」

「それで別れたから?寂しいから?ふざけんなっ!」

若葉はそう言うと、早野を殴りつけた。

「帰って!帰ってよ!2度とあたしの前に来ないで!あたし・・・今、お父さんと、すっごく幸せなのっ!」

そう言うと早野を追い出し、鍵をかけた。

扉の前にしゃがみこむと、声をあげて泣き出した。

俺は黙って、若葉の頭をなでた。

若葉はずっと泣いていた。



「若葉は・・・お父さんの娘ですよね?」

「ああ、そうだよ。」

「ずっとここにいていいんですよね?」

「ああ」

「ここがあたしの家ですよね?」

「ああ」

「あたしは・・・木下若葉ですよね?」

「そうだとも!」

泣き止んだ若葉の問いに、俺はそう答えた。

若葉はまた泣きながら、「ありがとう・・・お父さん・・・」と言った。

外で何か音がした。

もしかしたら、まだ早野がいたのかもしれない。

俺と若葉はその日、本当の父娘になった。



5月16日、若葉16回目の誕生日。

仕事を早く切り上げ、ケーキを買って家に帰る。

若葉は家にいて、笑顔で俺を迎えてくれた。

「お父さん、お帰りっ!」

そして、頬にキス(それって普通じゃないよね・・・)

部屋を暗くして、ロウソクに火を灯す。

それを一息で消す若葉。

灯りをつけようと立ち上がると、いつのまに側に来たか、若葉が身を寄せる。

「大好き・・・お父さん・・・」

長い長いキス(汗)

その後、若葉が作ったすき焼きを食べ、ケーキを食べて・・・

「一緒にお風呂に入ろうっ!」と、あの上目遣い・・・(汗)

狭い風呂場に、身を寄せ合って入る。

「また一つ、若葉は大人になりました。ありがとう・・・お父さん。」

この言葉は、何回聞いても涙が出る。



翌年の5月16日は、若葉の為に某ホテルを予約した。

17才となった若葉にドレスを着せてやり、アダルトな雰囲気で祝う。

未成年の若葉に、シャンパンはまずかった・・・

酔ってしまった為に、混浴と、あの感動の言葉はナシで(汗)

翌日、青い顔をしながら、「ありがとう・・・おとう・・・うぇっ・・・」じゃ、感動はないね(笑)

そんな反省もあってか、18才の誕生日は自宅で、ノンアルコールで。

感動の言葉の後に、抱きついてきた若葉を抱きしめ、長いキス。

そしてとうとう・・・



布団に入ってからも、若葉は何度もキスをせがんだ。

「どうしたの?」と聞きたくなる位。

そして・・・

俺の胸に顔を埋め、「お父さん・・・抱いて・・・」って。

「どうしたんだい?若葉?」

「だって・・・好きなんだもん・・・どうしようもない位、好きで好きで・・・誰よりも、お父さんの事が・・・」

俺の中で、何かがはじけた。

俺は若葉にキスをする。

首、肩、胸へと移行。

「お父さん・・・もう、お父さんなんてイヤ・・・お父さんって呼びたくない。何でお父さんなの?」

若葉はそんな事を言い続けた。

「若葉・・・俺も、若葉が好きだ。この世で一番、大切な女性だ。」

「う、嬉しいよ・・・お父さん・・・」

そして俺は、若葉の一番奥深い所に達した。

若葉の細い体を、折れんばかりに抱きしめて。

若葉もまた、俺にきつく抱きついてきた。



高校を卒業後、若葉は木下若葉となった。

娘としてではなく、俺の妻として。

だが俺の勧めで、大学だけは行く事に。

妻と大学生の、2足のワラジは大変だろうと思うが、努力家の若葉ならいけると思う。

今ではもう、すっかり縁が切れた早野だが、俺は早野に感謝する。

よくぞ若葉に、生を与えたと・・・

44歳となり、間違いなく俺は、若葉より先に鬼籍に入るだろう。

一人残った若葉が困らないように、手を尽くすつもり。

そして俺は、このちっぽけな生涯をかけて、若葉一人を愛するだろう。