kimamamh30027


あれは数年前、俺が25歳の時のお話。

当時、恵美っていう同い年の彼女がいた。

彼女とは高校ん時の同級生で、高2の頃から付き合っている。

もう8年も付き合っているんだし、俺の仕事も軌道に乗り始めた頃で、

そろそろ結婚なんて考え始めてた時期だったんだが、

彼女が浮気していた事が発覚した。

それは俺の友人が教えてくれた。

その友人の彼女と恵美は親友、その浮気話は、

恵美→友人の彼女→友人→俺、の経由で。





友人が俺に教えてくれた事によると、

10ヶ月ほど前の事で、恵美が高校の時の部活の先輩と浮気した。

二つ上の先輩で、俺は面識はないけど、知っている人だ。

恵美がどうも憧れていたっぽい先輩。

恵美とは高校卒業後もたまに連絡取り合っていたりしてたみたい。

その先輩は他県で働いているので、

たまに帰省した時なんかは一緒に飲みに行ったりもしてたようだ。

二人きりってワケではなく、部の親しかった面々も一緒にらしいけど。

まあ、それくらいだったら別に怒る事でもない。

しかし恵美はとうとうその先輩と一線を越えてしまった。







10ヶ月前に帰省してきた先輩と恵美は飲みに行った。

その時は二人きりで行ったようだ。

そしてそのまま一夜を共にしてしまったんだとさ。



しばらく恵美と先輩は続いたみたい。遠距離恋愛みたいな感じで。

だけど、半年ほど前に先輩が向こうで新しい彼女をつくり、

恵美は関係を断たれたそうな。

で、何事もなかったかのように今に至る、と。



信じられなかった。不覚にも俺は全く気付いていなかった。

思い返しても、恵美が不審なそぶりを俺には見せた事はなかった。

俺が鈍感なのか、恵美が演技派なのか。





もちろん俺は後日、友人から聞いたその話の真意を恵美に問い詰めた。

恵美は腹が立つほどあっさりと認めたよ。



恵美によると、その10ヶ月前に飲みに誘ってきたのはその先輩の方から。

皆と一緒ではなく二人で飲みたいって指定してきたのも先輩の方から。

飲んでいる時に先輩が、実は彼女と別れたばかりだということを告げてきた。

もちろん、だからと言って恵美に関係を迫ってきたわけではなく、

その先輩は彼女と別れた事でただただ落ち込んでいる様子で、

自分のツライ心情を恵美相手に語ってきた。

「一人は寂しい。」「彼女が恵美ちゃんみたいな人だったら・・・。」

みたいな事を言っていたそうな。



かわいそうな先輩を慰めているうちに、

恵美はついホロっときてしまったのだろう。

「私でよかったら・・・。」

そして、二人はそのままホテルへ直行。朝まで・・・。





まあ、俺が思うに、その先輩が彼女と別れたのは本当だろうけど、

最初から恵美とやるつもりだったんだろうな。

かわいそうな男を演じて、恵美の同情を誘いつつ、

また恵美を持ち上げて、恵美をその気にさせたのだろう。

上等な手口とは思わないけど、恵美は情けとおだてに弱い。

まんまとのせられたわけだ。



もともと恵美にも先輩に対する憧れの気持ちがあるから、

そういう関係になる事に抵抗はなかったんだろう。

むしろそうなるのを望んでいたのかも。

憧れの先輩が自分を頼ってきてくれる、恵美はたまらなく嬉しかったはず。

狡猾な先輩は当然その辺は熟知していたはずだ。







しばらく遠距離恋愛みたいな感じで二人は付き合っていた。

恵美の方が向こうに行く事も度々あったそうな。



ただその先輩にしてみたら、

恵美は新しい恋人が出来るまでの中継ぎ程度にしか考えてなかったんだろうね。

だから向こうで彼女が出来たとたん、恵美にもう会えないと言ってきた。



実情は恵美はもてあそばれて捨てられたに等しいんだが、

その先輩はそれを恵美に気付かせないように上手くやり、

そして恵美を傷つけないように上手く言って別れたようだ。

はたから聞けば「はぁ?」な話だが、

先輩を信じきっている恵美は盲目になっている。

だから恵美はその先輩について今でも悪感情を抱いていない。





それどころか、その先輩の事を語る恵美は、

昔の良かった恋を語る思い出口調になっている。

おいおい、彼氏の俺の存在は何なんだ。

正直、俺に対する罪悪感なんて感じていないように思えた。

むしろ俺と付き合っていなかったら、

あのまま先輩と付き合えたのにと言いたげだ。

さすがに俺はブチ切れて、

「お前は都合よくその先輩に利用されてただけなんだよ。」

みたいな事を言ってみたが、

恵美は、「先輩はそんな人じゃない。」とかばい、

「あなただって悪いのよ。」と何故か俺を悪者にする始末。

痛い女だ。

まあ、恵美が浮気していた事を全く気付いていなかった俺も痛いが・・・。

しかし自分だけ悪役にならず、まんまと逃げ延びたその先輩が憎い。





俺は恵美の言っている事をことごとく論破した。

すると次第に恵美は意味不明に取り乱し始めた。

「先輩はいい人。浮気じゃなく本気だった。

今でも先輩が好き。原因はあなたにもある。」などなど。

女って感情の生き物だなあって思ったよ。自分に酔っている。

とにかく自分を正当化したいようだ。



「じゃあ、何でその時に俺と別れて、先輩と付き合わなかったのか?」

と聞いたところ、

「あなたがかわいそうだから。」

だそうな。

アホか。





彼女は彼女なりの理屈で俺を責め始めた。

「私と先輩の事はもう半年も前に終わった事。

気付いていなかったくせに、今になって私を責めるのはおかしい。

私はあの間もずっとあなたを好きだった。

だから今、私を許す許さないとか、

気付いていなかったあなたにそれを決める資格はない。」

分からんでもない部分もあるが、全体的に矛盾が多い。

まあ、無理にまとめると、俺とは別れたくないって事か。





もうしまいには俺も呆れて、

「はいはい、お前の言う通り。でも俺はお前と別れる。」

と彼女の言う事には耳を貸さず、別れるで押し通した。

もちろん本気で別れるつもりだった。



最初は彼女も、

「別れるなんてのを持ち出して逃げるのは卑怯。」

と、またワケ分からん事をぬかして俺を罵ってきたが、

もう俺は取り合わず、別れるの一点張り。



そのうち急に彼女はしおらしくなり、泣いて謝りだした。

「私が悪かった。一時の過ちだった。あなたの事が一番好き。」などなど。

さっきまでと言っている事が全然違う。

そして別れたくないの一点張り。

ウンザリだ。





でもまあ結局その時は、彼女の勢いに押され許してしまった。

もちろん釈然としない。

だから俺は心の中で彼女の位置を、

恋人からセフレに降格させる事で、自分自身を密かに納得させた。



実は俺は恵美が初めての女で、恵美も俺が初めてだった。

だけどその事件が発覚して以降、恵美を抱く度に、

「ああ、俺しか知らないと思っていたこの体は他の男も知っているんだ。」

とか考えると妙に燃えた。

「俺は恵美しか知らないのに、こいつは自分だけいつの間に・・・。」

など、性についてはお互い対等だったはずが、

彼女に優位に立たれたようで「ズルいぞ」なんて感じたりもした。





それだけに恵美をネチネチといじめた。

先輩とどんなことしたか聞き出したりして一人興奮したりもした。

変な話だが他の男に抱かれた恵美の体が新鮮に思えた。

それまでの恵美とは別の恵美を抱いているような感じがしたのだ。



恵美は俺に負い目がある為か、

何を言われてもやられても我慢して俺に従った。



でも俺もそのうち飽きてきたし、

何かこういう妥協した関係に嫌気がさし、別れた。

恵美もこんな俺に耐えるのに疲れたのか、

今度はあっさりと別れを承諾してくれたよ。